Are you boy?
女の子だったらよかったのに・・・
最近ふとそんな風に思うようになった。
小さい頃は女の子に間違われるのが嫌で嫌で仕様がなかった。
10人に7人は僕を女の子と勘違いした。
「まあ、美人さんね。将来が楽しみね。」
「折角こんなに可愛いのにスカートはいたらもっと似合うと思うわ。」
「あら年子?女の子と男の子じゃ玩具や洋服も共有できないから大変でしょう?」
初めて僕を見る人は大抵そんな風に言ったものだ。
僕を男と認めた残りの3人だって・・・
「男の子だよね・・?」疑問符が付いていたり、
「大丈夫!!周助くんは男の子だって。」何故か励まされていたり、
「男らしい遊びを教えてやろう!!」って僕は普通に男の子がする遊びをしてるんですけど。
結局何処か頭の片隅で女の子みたいって気持ちがあったんだろう。
まあ、その頃から細かったし、髪質が柔らかくてこしがなく短く切っても様にならないから微妙に長く伸ばしていたしね。
自分でも女の子みたいな風貌だって正直分かってはいたんだ。
性格もどっちかって言うと大人しかったし聞き分けも良かった(方だと思う)からますます女の子らしさに拍車を掛けていたのだろう。
同じ兄弟でも裕太は見た目も男の子って感じだし、末っ子独特の雰囲気からもやんちゃ坊主で通っていた。
如何して神様は兄弟同じ様な容姿や性格を与えてくれなかったんだろう。
そんな風に良く考えたものだったけど小学校の高学年にもなった頃はさすがにもう慣れっこになって女の子に間違われても笑って済ますようになっていた。
だけど卒業記念の演劇で白雪姫に抜擢された時は正直複雑だったのを覚えている。
主役だし本来なら凄く光栄な事なんだろうけど。
でも僕はやっぱり少し悔しかった。
王子様をやった子はクラスでも人気があってちょっとかっこよくて
僕も彼のようだったら王子様になれたのかな。
中学に入って制服を着るようになってからはさすがに女の子には間違えられなくなったけどやっぱりこの容姿にコンプレックスがないと言ったら嘘になる。
テニス部に入部前は野球とかサッカーとかもう少し男っぽい部活も考えた。
絶対男しかいないだろう相撲部さえ真剣に検討したくらいだ。
同じクラスになった英二が涙目で止めなければ今頃立派な力士だったかもしれない。
結局、小さい頃からやっていたテニスに落ち着いてしまって、もちろん部活は楽しいし何の異存がある訳でもないけど結構ハードな割りに優雅なスポーツって思われるんだよね。
「不二君にぴったりね。」なんて言われるとどうしても自分の中に女性を見られているようで力士を諦めたのは間違った選択だったかと思う事も無きにしも非ず・・・
一層女の子だったらどうだったかな。
もしかして女性なら自分はとても恵まれているのかもしれない。
綺麗だの可愛いだの言われても褒め言葉として素直に喜べただろう。
お姫様に選ばれた事も堂々と自慢できた筈だ。
案外男の子にモテちゃって周りからは羨望の眼差し見られてたりして。
そうだ、一層の事女の子だったらよかったんだ・・・・・
それに・・・・今、隣で一緒に朝を迎える君はどう見ても僕と同じ男なわけだし・・・
そう、僕の恋人は同じ学校、同じ学年、同じ部の手塚国光。
容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能の手塚国光。
テニス部の部長をはじめ生徒会長までこなすスーパー中学生手塚国光。
その気になればどんな女の子も靡くだろう。だけど彼の恋人は僕な訳で・・・・
僕はそっと手塚の頬に触れてみた。
「・・・・・・ん・・不二?」
敏感だな。これだけで目を覚ましちゃうなんて・・・
「珍しいな、お前が先に起きてるなんて。まだ少し早いだろう?」
「ごめん起こして。何となく目が覚めちゃってね。色々考えてたら眠れなくなっちゃったんだ。」
「色々?」
「うん。色々ね。」
「・・・・・・・・」
少しの間が君に何か考えさせてるのが分かる。
きっともうすぐ僕に質問するよ。
「何だ?」
そら、きた。
「何か悩んでいるのか?」
「違うよ。ただ昔の事をちょっと思い出してただけ・・」
「それで?」
「それでって?・・えっと、まあ僕が僕じゃなかったら何か違ったかな・・・とか」
「・・・・・・・・・」
何その表情?・・・君の眉間に皺が入った気がする。
それにこの沈黙、僕何か気に障ること言ったっけ?
何となく居辛くなって思わず俯いていると、
「・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・お前は、」
手塚はかなり間を空けてから喋りだした。
「・・お前は、俺の事をどう思う?」
はぁ?何なんだいきなり・・
「ど、如何したの、手塚?」
「質問に答えろ。」
「えっと、そりゃ好きだよ。」
「何故だ?」
「は?」
「何故俺が好きなんだ?堅物で愛想もなくて融通も利かない。頑固だし・・・その・・・老けてるし・・・いやその、若者らしく気の利いた言葉すら掛けられない俺の何処が好きだ?」
僕は暫く呆気に摂られた。手塚がこんなに自分のことを判ってたなんて意外だった。
意外だけど・・それが妙に壷に嵌まる。
「ぶ〜〜〜〜〜〜〜っっ!!くっくっくっくっ・・はは、あはは、あははははっは」
溜まらず噴出して大笑いしてしまった僕を見つめる君はきっとまた深い皺を刻んでるんだろうね。
「ご、ごめ・・・でもあんまり自分のことよく判ってるみたいだから・・つい・・くっくっく」
「笑いすぎだ。」
「大好きだよ手塚!!堅くて愛想ないとこも、老け・・・えっと妙に落ち着いてるとこだって僕はそんな君だから好きなんだよ。ホントにホントに大好き!」
「なら、俺のためにお前もお前のままでいろ。」
「え?」
「お前がお前でなかったら俺が困るからな。」
照れくさそうにそう言って横を向いた手塚。手塚らしくないその態度に僕はぽかんと口を開いた。一瞬間抜けな顔してたと思う。
「くすくす・・手塚ってばさっき言った事気にしてくれたんだね。でもそんなに深刻に考えてたんじゃないよ。」
「・・・・・・・・・」
「あのね。もう慣れたけどちっちゃい頃から女の子みたいって言われてきた事、僕としてはやっぱり不本意だったんだ。でもホントに女の子だったら結構ウハウハだったのかなってね。君との付き合いにしたってもっとオープンにできるだろうし・・・・それに・・・・」
「それに?」
「女の子ならもっと触り心地いいと思うよ?」
「な、何を・・・」
あ、今エッチな想像したよね。
背けた視線が上擦ってるよ。手塚って案外可愛いね。
でも、ホントに思うんだ。特に終わったあとは・・・
「満足できてるのかなあって・・・・」
「お前、何を言ってるんだ。」
「いや、マジで女の子だったらきっともっと柔らかい感触だよ?こんな容姿でもやっぱ僕は男だし、おまけにテニスで鍛えてるから、なんて言うかそんなに気色のいいもんじゃ
ないって言う前に手塚がそれを否定した。
「そんなことはないぞ。お前の肌は滑らかで綺麗だ。触り心地も抜群だ。」
そんな台詞、真顔で言わないでよ。恥ずかしいなあ・・・もう・・
「あああ、ありがと手塚。でもさ・・・・最後のあれは・・・ね、女の子にならもっとスムーズにいくでしょ。本来収まるべきとこに収まるっていうか・・・・痛さもね、きっと違うだろうし。」
「お前、やっぱり辛いのか?いや、辛いのはそうだろうが、女になりたいと思うほど我慢していたのか?俺はそんなにお前に無理させてたのか?」
手塚がだんだん僕に詰め寄ってくる。思わず仰け反るように背中を後ろに引いた。
手塚の肩を両手でぐいっと押しやりまあまあと宥めるようにぽんぽん叩く。
「違う、そうじゃないって。確かに最初は物凄く痛いけどね。凄く幸せなんだよ?気になってるのは僕のことじゃなくって君の方。君ならきっといくらでも素敵な女の子と付き合えるのに僕なんかを選んでくれて、十分すぎるほど大切にしてくれて、でも僕はこの通り男で君に釣合うとか以前の問題だよ。だからせめて女の子だったらもっと君を幸せにしてあげられるのになって・・そういうことなの。」
「・・・・・・・・・・・悪い、よく判らん。挿入がスムーズだと俺はもっと幸せなのか?」
「あ、いやそういう事では・・・」
全くこの朴念仁、頭いいくせにこういうことは鈍いんだから・・
「お前、まさか俺と別れて女と付き合えと・・?」
僕は大きくぶんぶん首を振った。確かにこの関係は手塚にとってプラスとは言えないけど今更手塚と離れるなんて出来るわけない。我侭と言われようとそれだけは無理。
俺と別れる・・そんな台詞だけで涙が出そうになってきた。
「ち、違うよ。そんなこと言うはずないでしょ。ただの例え話だよ。」
「ならその事は話し合っていても仕方のない事ではないのか?」
「う、まあそうなんだけど・・」
「だったら、もう考えるな。」
「・・・・・そう・・だね。」
そう答えた僕の眼をそっと拭って頭を自分の胸へと押し当てた。
「なあ、不二。俺は男とか女とかそんな事はたいした事ではないと思っている。同じ人間だろう?好きになった人がたまたま男だったというだけだ。それにお前との事を俺は隠したいわけではないぞ。別に公表したって・・・」
「なっ何を言い出すかと思えば・・そんなこと出来る訳ないでしょ!」
僕は慌てて否定した。
「何故だ?」
「何故って?いい?僕たちは男同士なんだよ。それを公表して皆がどういう目で見るか分かるでしょ?」
「お前はそれが嫌なのか?」
「僕のことじゃなくて・・・その君が、変な風に言われたりしたら・・」
「俺が?そんなことどうでもいいが・・・。言わせたい奴には言わせればいい。お前が自然でいられるのが一番だ。だから、」
「このままでっ!!このままが一番いいんだ。僕は十分幸せだからっ!!」
「・・・それならいいが。」
よかった。手塚のことだからホントにこのままの勢いで公言しそうだった。
僕は安堵して胸を撫で下ろしたが、反面何とも言えない感情が高揚する。
手塚の言葉に溜まっていた涙が溢れて頬を伝う。
嬉しかったんだと思う。
なんだ、このままでいいんだ。今のままの僕で、それでいいんだ。
そう思わせてくれた手塚の言葉が嬉しかったんだ・・・
女の子みたいな容姿が気に入らないほど僕はやっぱり男なわけで、手塚のために女の子になりたいって願ってもそれも叶う筈もなく、だからと言って別れる事なんて到底出来っこない。
だったら素直に今この時を君と過ごせばいい。余計な事は何も考えず・・
君が僕を受け入れてくれる限り僕たちは永遠でいられる。
歓喜の情に酔いしれて僕は手塚にしがみ付いていた。
手塚が僕に話し掛ける・・・
「不二、よく考えてみたらお前はやっぱり男でよかったかもしれない。」
「え?」
「スムーズにいったら物足りないじゃないか。」
「??」
「数学と同じだ。難問を解してこそ遣り甲斐がある。」
「???」
「つまり狭き門だからこそ慣らし甲斐もあるというものだ。到達したときの達成感は気持ちよいものだ!」
「て・て・・づか?」
気持ちよいものだ!って、そういう気持いいとは違うんじゃないかな?
それはあれの気持ちよさでは・・・・・!?
しかも真顔で言う事か?
真っ赤になってる僕に追い討ちを掛けるように
「それにあの締め具合が絶妙なんだ。あれはきっと女性では味わえない。男ならではの・・・」
「わぁぁぁぁ〜〜〜〜〜手塚それ以上言っちゃだめぇぇぇ〜〜〜〜〜〜〜」
慌てて手塚の口元に持っていった僕の手は意図もあっさり押し除けられた。
「男ならではの感触かと推測する。俺はあれ以上の刺激は有り得ないと思っている。かと言って他の男を抱く気など毛頭ない。よってお前はやはり男でよかったということだ。」
い、言い切っちゃいましたよ手塚くん。
恥ずかしさのあまりベッドの脇からすり抜けようとした瞬間、手塚の掌が僕の腕を掴んだ。
「何処へ行く?」
「え?あ・・のシャワーでもしようかと・・・・」
僕の言葉の続きを君の唇が呑み込んでいった。
貪るような激しいキスの後再び僕の身体はベッドへ引き戻される。
欲求のままに押し倒された僕は精一杯の言い訳を口にした。
「あ・・の今日はこれから学校だよ?」
「まだ時間は大丈夫だろう。」
時間の問題じゃない。君を受け入れた後僕がどうなるか分かって・・・・
ま、いいか・・その時はその時
今はやっぱり君を
精一杯
感じたい・・・・・
end