Eternal Heart


「見合い・・ですか?」
「ええ、先月したそうよ。」

手塚は自分の聞き違いであることを半ば願って聞き返したのだが、母からはあっさりと肯定の答えが返ってきた。

「何故なんです?」
「ああ、おじさんの会社関係のお話みたいよ。お仕事絡みでいろいろあるんじゃないかしら。」
「でもあいつはまだ学生でしょう。結婚なんて早すぎる。」
「そんなこと・・・。確かにちょっと早いとは思うけど、いくら親しいからってこっちが口を挟む事じゃないわ。」

最もである。
いや、しかし手塚にも言い分はある。
同級生で幼馴染の不二は、家が近所であったことからそれこそオムツもはずれない頃からの付き合いだ。
同じ幼稚園、同じ小学校、習い事さえ同じテニスクラブへ通いふたりはいつも一緒だった。
手塚が青学を受験した時も当然のように不二は付いてきた。そして二人して入学。
部活も同じ、男女の違いこそあったがテニス部で共に汗を流した。
中学を卒業後、テニス留学でアメリカに渡る事になった手塚。
ふたりは初めて違うレールを歩くことになったわけだが、最終的には不二は自分の横にいるものだと手塚は思いこんでいたのだ。
それが久しぶりに帰国したらこの展開だ。

「アメリカから何年も帰ってこないような奴なんて眼中にないわよ。あなたのことだからどうせたいした連絡もしていなかったんでしょう?」

返す言葉がない。
母の言うとおり手塚がプライベートで日本に帰ったのは、留学してからこれが2度目だ。
それも古傷の左肩が痛みを訴えなければおそらくなかった帰国である。
一度目は留学期間を終えプロデビューする前に両親へこれまでの礼と報告を兼ねて戻ってきた。
それからは様々な海外トーナメントを渡り歩き、休暇ですら自主トレに明け暮れる毎日。正直日本に帰ることなど考えた事もなかったのだ。
不二とは何度かは逢った。
しかしそれは試合のために「やって来た」時である。
いつも観客席で応援してくれていた不二。けれど考えてみればそれだけだ。
試合期間中は精神統一のため、静かに過ごすのが手塚流。
東京での試合はたいてい実家で滞在する手塚だが、それを知っている不二は敢えて家にやって来なかった。精々外で1・2度食事をする程度だ。
試合が終われば慌しく次の試合に向けて手塚は旅立ってしまう。
二人の距離が縮まるようなことは皆無だった。

「幼馴染」、男女としては何もない関係だ。ただ幼い頃から一緒に育ってきただけ。言うならば兄妹のようなものである。
ある日突然『恋人ができました』と宣言されても何の不思議もないわけで。
それでも手塚は不安を感じる事など一度もなかったのだ。
それは自分と不二は同じであると疑った事がなかったからだ。

手塚は今、母の言葉に頭を殴られた気分だった。
不二に対する根拠のない自信が根底から崩れていったわけだ。

不二に男・・、しかも結婚だと?

めずらしく焦燥する様子をみせる息子に母はにっこり笑ってぽんと肩をたたいた。

「まあ、お見合いなんだしどうなるか分からないわよ。あなたもこの際自分の気持ちはっきりさせたらどうなの?」

気持ち・・・と言われても。
手塚はこの手の疎さにかけては超人的だ。
不二は自分にとってはなくてはならない存在。それは間違いないのだが、だからと言ってそれをどう表現すればいいというのか。
しかも当の不二が自分をどのように思っているのかについて、たった今自信がなくなったばかりだ。

「あら、噂をすればなんとやらよ。」

手塚家の勝手口から入ってくる他人は昔から不二しかいない。

「こんにちは〜。おばさん、手塚帰ってきた?」

誰かいるときは無用心にも開け放たれているその扉、昔から玄関ではなくまるで家族の一員のようにそこから上がりこむ様子は今も全然変わっていない。

「お帰り、手塚っ!また一回り逞しくなったねぇ。」

手塚を見つけるや否や飛びつくように腕に絡まってくる。
零れるように顔いっぱいに溢れる笑顔も幼い頃のままだ。

だが手塚はというと、子供の頃と変わらない不二の様子に改めて自信を失う。
そう、不二は昔と何にも変わってないのだ。
つまり赤ん坊の頃と同じ。何らかの感情があって手塚に甘えているわけではない。
条件反射と言おうか、外国人が親しい人にキスをする習慣があるのと同じような。

「・・・・っ!」

不二の無邪気なこの振る舞いに手塚の中で何かがぷつんとはじけた。

「・・・・な・・に?」
「いいから来い!」

手塚は行き成り不二の腕を掴み、不二が目を丸くしているにも構わず強引に引きずるように歩き出した。

「母さん、しばらく部屋には誰も近づかないで下さい。」
「え?ええ。」

一体何の迫力か、いつもに増して鋭い目つきで真直ぐ前を向く息子に頷かざるを得ない。
けれどそこはやはり母である。

「ふふっ、かかりの悪いエンジンだったこと。頑張って。」

既に2階へと姿を消した手塚に小声でエールを送った。





自室に入って漸く手塚は不二の腕を解放する。
強く掴まれて痛みの残るそれを擦りながら、不二は手塚に怪訝な表情を向けた。

「何なの、急に。」
「本当か?」
「は?」
「見合いしたと言うのは本当か?」

行き成りの質問に少々驚きを見せたが、すぐにふっと笑顔に戻る。
こんな時の笑みはそう、どこか余裕というか作られた顔。
笑顔がトレードマークと言っていい不二だが、時々躱す術のような表情を作る。
不二から出てくる答えが読めた。

手塚には関係のない事だよ―――

不二の顔はそう語っている。
思えばいつもそうだった。昔から不二が本当の意味で手塚に相談しにくることなんて一度もなかった。
つまらない愚痴や不平を漏らすことはあっても最終的には自己完結。初めから手塚に何とかしてもらおうなんて考えはこれっぽっちも持ち合わせていない。
今回もそうだろう。見合いをするのは不二自身。結論を出すのも不二。もちろん相手は手塚ではない。
不二の中でその一連の出来事に手塚は存在しないのだ。
「幼馴染」というものがこんなにじれったいものだとは思わなかった。
妹ならまだ文句の一つも言えただろう。けれど不二は家族のようでいてその実赤の他人だ。そして恋人でもない。
だから不二が何も言わなければ母の言うとおりあれこれ手塚が口出す権利が全くないわけだ。

「くすっ、おばさんから聞いたの?」
「ああ。」
「そっか。でもまあ、どうでもいいじゃん。それよりさ、肩大丈夫なの。手塚がこんなに長く休暇をとるなんて、よっぽど調子悪いのかなあって―――――」

手塚の予想通り、不二はさらっと素通りしてもう別の話題に移っている。
それでも手塚にとってここで流されていい問題ではない。

「・・・なのか?」
「――――― 何?」
「そいつの事が好きなのか?」
「そいつって・・?」
「見合い相手だ。」
「なあに?まだその話。どうでもいいって言ってるで―――」
「どうでも良くないから聞いている。」

真摯な瞳を向けられると答えを返さないわけにはいかない。

「こんなことに君が興味を持つとは思わなかったけど。」
「不二。」

素直に思った事を口にしただけだったが、手塚は思っている以上に真剣だ。
手塚とするような話ではないと思っていたが、こう真直ぐに問いかけられたら答えるしかないだろう。
不二は仕方がないと言わんばかりの短い溜息を吐いた。

「んなわけないじゃない。ちょっと話しただけの人を好きになれるほど僕は単純じゃないよ。」
「本当か?」
「うん。もういいでしょ。」
「本当に本当だな。」
「しつこいなあ。本当だって・・・・・」

「・・ば。な・・にしてる・・の?」

手塚は一体何をしてるのか。不二にはさっぱり理解できなかった。
確か見合い相手の話をしていたはず。いや、今話している最中のような・・・。

不二の身体はちょうど上から手塚が覗きこむような形に仰向けに倒されていた。
昆虫の標本のように首を挟むような形で手塚の腕がしっかり留まっている。
しかも顔がぼやけるほど至近距離にありすぎて身動きが取れない。

「ならば問題はない。」
「・・・え、あの・・ちょっ・・んっ!」

いきなり唇に柔らかい何かが押し当てられた。

・・・え?・・・え?・・・え?

目を見開いたまま不二の頭の中は疑問符が飛び交う。
訳が分からず動く事もできずにいると生暖かいその感触は喉元に鎖骨にと移動しだした。
少し硬めの髪がちくりと肌を刺す。同時にはっと我に返った。

「ちょっ・・手塚っ!!なななな何してるの!?」

いつの間にこんなに肌蹴ていたんだろう。
気が付けばブラウスのボタンが次々とはずされ胸元近くまで大きく露になっていた。
ぐいっと手塚の身体を自分の向こうに押しやるとまっすぐ射抜くような視線が降りてくる。

「お前を抱いている。」
「て、手塚?」

何を言っているのか?見合いの話からどこをどうすればこんな展開になるんだ。

「あ、あの・・これは・・一体・・」
「つべこべ言うな。他の男に連れ去られる前に俺がもらう。」

有無を言わさず。
再び手塚の唇が不二の肌を辿りだした。

「ちょちょちょちょちょっと・・まっ・・て・・あの・・おば、そう、おばさんが下にいるのにっ!!」

不二の必死の抵抗に動きを止める手塚だが

「理由はそれか?それなら大丈夫だ。しばらく近づくなと言ってある。」
「ええ!?」

そ、そんな問題か!

そしてまた手塚の行為が再開される。しかも今度はしっかり胸まで掴まれてるし!
さらに剥ぎ取られていく洋服、気が付けば下着の肩紐もずらされてあと少しでささやかな胸がお披露目される・・・

「だっだめ!!手塚、だめだよ。こんな・・いきなり・・」
「嫌か?」
「え?」
「お前は俺とこうなることは嫌か?」

手塚にしてはどこか切羽詰ったような声。
そんな聞き方は卑怯だ。
そんな目で嫌かと問われたら逃げ道がない・・・。

「そんな・・ずるいよ。そんなの・・僕・・。」

戸惑う不二の髪をそっと掻き揚げ額に口付ける。

「嫌じゃないなら力を抜いてくれ。優しくする。」

手塚の眼差しとその言葉に全身の力が抜けていく。
諦めたわけではない。
きっとどこかで望んでいた。手塚といつかこうなることを。

不二は抵抗をやめた手をもう一度手塚へ伸ばした。
今度は大きく手塚の背中に回すように。




×××××××××



不二は手塚に背中を向けたまま何も言わず横たわっている。
もしかして泣いているのだろうか?
それもそうだろう。不二にとって初めての行為だった。
もちろん最初からそうだとは決め付けていたが、今実感しただけに手塚も不二の様子が余計気にかかる。

「不二?」

手塚がそっと手を伸ばす。触れた途端ぴくりと不二の肩が揺れた。

「お前・・泣いて・・」
「嘘つき!」

振り返った不二は手塚の予想と反し、キッと鋭い目つきで睨んでいた。

「優しくするって言ったのに!」

涙を流して・・というよりは唇を尖らして、どう見ても怒っているような様子を見せる。

「優しくしたつもりだが・・。」
「どこがっ!」

ガバっと起き上がって不二は白く滑らかな肌を手塚に向ける。
シーツを胸元まで手繰り寄せているものの、視界に入る箇所だけでも所々にくっきりと手塚が愛した証が残っていた。

「こ、こんなになるまで・・」
「しかし、それは・・そういうものだと・・」
「じゃあ、これはっ!?」

不二が身体を覆っているシーツを捲ると艶かしいほどの脚線美が目に映る。
散々堪能したにも関わらず、再び手塚の喉がなる。
その横には花びらが散るように赤い染みが付いていた。

「痛いって言ってるのに、血がでるまでするなんてっ!」
「いや、だがそれは仕方な・・」
「あ〜ん!きっとどこか切れちゃったんだ。お風呂とか入ったら沁みるんだよ。どうしてくれるのっ!!」

ロストバージンなんだからそれは仕方のないことなのだが、それを手塚がどう説明できようか。

「手塚のばかぁ〜!」
「す、すまない・・」

結局手塚は謝るしかできない。
けれど肝心な事を何も知らない無垢な不二に手塚は反って嬉しくもある。
他の誰も触れた事がない、自分だけが不二を知っているのだ。
思わずにやつきそうになる手塚は不二の言うとおりやっぱりばかなのかもしれない。
それだけ不二に対する想いが強いということだ。
初めての経験に(?)涙を流す不二を手塚はそっと腕の中に引き寄せ暫く頭を撫でていた。


「国光〜、周ちゃーん、ご飯よー、そろそろ降りてらっしゃい。」

下から手塚の母彩菜の二人を呼ぶ声が聞こえる。
約束どおり部屋には上がってこないが、二人が篭ってから相当の時間が経っていた。

「え、もうそんな時間?やだっ、早く服着なきゃ。」

慌てて手塚に脱がされベット脇に飛び散った洋服を拾い集める。
シーツに包まったままもそもそと何か探し回っているようだ。

「これか?」
「ありがと・・・じゃなーい!!手塚のばか!!今すぐアメリカに帰れっ!」

真っ赤になって奪い返したそれはなくてはならない可愛いピンクの「ぱんつ」。

「それはできない。」

ぷんぷん怒りながらも慌ててごそごそ着替える不二に手塚はきっぱりと言い放つ。

「こうなったからには俺には責任がある。見合いのこともあるし、ご両親にも話を・・」
「ああ、お見合いなら断ったよ。」
「・・・断った?」
「うん、とっくに。」

そんなにあっさりと答えられても・・・。
手塚の顔から血の気が引いていく。

「何故それを早く言わないんだ。」
「だって、言う間もなく君が押し倒したんじゃない。」

しまった・・・。
手塚は節くれた大きな手で顔を覆って落胆の長い溜息を吐き出した。

「どしたの?」

手塚の気も知らず呑気な表情で問うさまも実に可愛らしいのだが、なんてタイミングが悪い奴なのか。
本当はこんな強引なことはしたくなかった。
勝手な思い込みはしていたものの、手塚は不二が大学を卒業したら自分の元へ呼ぶつもりだった。
これまで恋愛の「れ」の字もなかった分、一緒に世界を回りながら少しずつ愛を深めていきたかった。
手塚にとって不二は大切な存在。ふたりで過ごしていくうちに不二が本当に手塚でいいと思える日が来た時自然に結ばれるのが一番いいと思っていたし、手塚の不二への愛の形でもあったのだ。それが不二が他の誰かと結婚するかもしれないと思うといてもたってもいられなくなってしまった。

「悪かった。」
「・・何が?」
「お前の気持ちも聞かず強引なことをしてしまった。謝っても遅いんだが・・」
「何だ、その事。別にいいよ。ちょっと驚いたけど、どうせ僕は君のお嫁さんになるんだし、遅いか早いかの違いでしょ。」
「お嫁・・・!?」

思いも寄らない不二の台詞に手塚は面食らってしまう。
対外自分も勝手な想定をしていたが、そこまであからさまに将来を決めてはなかった・・ぞ。

「まさか、見合いを断った理由って・・」
「やだなあ、君に決まってるじゃない。手塚がいるのに見合いする事自体失礼だって言ってるのに、父さんが会うだけでいいからって。まあサラリーマンも辛いとこなんだ。大目に見てね。」

目の前でにっこり微笑む不二。
どうでもいいじゃんって言葉はもう片がついていたからだったのか。
誤魔化そうとしていたわけでもなく、本当に不二にとってはどうでもいいことだったようだ。
それに出来るなら手塚には言いたくないというのも乙女の心情。

何だったんだ・・・

あれこれ考えていた自分はなんて滑稽なのか。
それこそ谷底へ突き落とされた気分だったというのに。
当の不二はあまりに能天気すぎて、知らず知らずのうちに眉間に得意の皺を何本も刻み込んでいた。
その姿を目の当たりにして、いくら不二でも何も思わないはずはない。

「ねぇ、やっぱり怒ってるの?それとも僕を抱いてがっかりしちゃった・・のかな。」

不二の表情が翳りだす。笑顔も失せて目にはうっすら涙すら溜まっていた。

「もしかして、痛いって怒ったから?だってホントに痛かったんだも・・ううん、ごめんなさい、もう言わないから。かなり拷問だけどこれからは我慢する・・から。」

拷問って・・
痛みは徐々に快楽に変わっていくものだ・・・とはさすがの手塚も口にするのは戸惑うところだ。
だけど、

ぷっ―――

そんな風に必死で訴える不二がいじらしくて、さらに愛しさが増していく。
それにあんなに怒っていたくせに、拒否するどころかこれからも手塚を受け入れるつもりらしい。

「くっ、くっ・・」
「何でそこで笑うの?僕は真剣なのに!」

猫のようにころころ変わる表情。さっきの涙目はどこに行ったやら。
再び顰めっ面に面を取り替えたようだ。
降参だ。
今更悔やんでもやってしまったものはどうしようもない。
それにどう考えても不二を手放す事など手塚にはできないのだ。
そうなればやっぱり不二には自分の所へ来てもらうしかない。
この生がある限り、いやいつかその終わりが来ても天の国でやっぱり手塚は不二といたいとそう思う。

手塚の腕が不二を引き寄せる。
すっぽり隠れてしまうほど小さな身体をぎゅっと抱きしめてこれからもずっと離さないと心に誓った。

「悔やんでいるのは俺自身の不甲斐なさだ。お前がどうこうではない。お前が俺のものになったことは・・・嬉しいと思う。」
「僕はずっと手塚のものだったよ?だから君がいない日も頑張る事ができたんだ。」

首を傾げてそんな台詞をさらりと言う。
男女の関係など何一つなかった。キスをしたことも、特別な気持ちで手を繋いだ事も、気持ちを伝えた事すらなかった。
旅立つ時さえ何の約束もしなかった。
それでも不二は分かっていた。手塚と同じように、いつか未来を共に行く人だと。
手塚を信じて何年も黙って待っていた。


「ねぇ、手塚、暫くはこっちで過ごすんでしょう?」
「ああ、腕が落ち着くまでテニスはお預けだ。」

不二の細い指が労わるように手塚の左肩にそっと触れる。
その表情は当人よりもずっと辛そうだ。

「そう・・残念だね。」
「ああ、だがずっと走り続けていたからな。たまにはいいさ。お蔭でお前とゆっくり過ごせる。」

甘い言葉に免疫はない。
照れもせずさらっと言ってのける手塚に思わず不二は赤面しそうになるが、同時に幸せを実感する。

「えへへ、僕にテニスの代わりが務まるかな。」
「十分だ。だが、お前の代わりはテニスでは埋められない。いいな、限界はお前が学校を卒業するまでだ。」

きっぱりと言い切る手塚にまた気持ちが溢れそうになった。

「・・・・大変だ。単位落とさないようにしなきゃ。僕だってもう限界・・だから。」

手塚の胸の中、背中に回した腕にきゅっと力を込める。
手塚はそれに答えるようにそっと囁く。

「好きだ」

二十一年間、一度だって聞いた事がなかった。

けれど、言葉などなくても想い合ってきた。
形などなくても愛し合ってきた。


確かなものなんて何も見えない。
信じるものは心だけ。

これまでも、これからもずっとずっと信じている。

君の心、そして――― 自分の心。



不二の卒業まで後半年――――



END


もうちょっとドリームっぽいのを考えてたはずが・・どうもうちのフジコちゃんはいつもこんなのりで暴走していく・・(苦笑)。