脛骨異形成症について

様々な呼び名で呼ばれています
当院では脛骨異形成症と呼んでいます
 脛骨異形成症という病気は他にもさまざまな呼び名で呼ばれており未だに統一されていません。脛骨遠位内反症、脛骨形成不全症、脛骨内湾症など。これらは同じ病気であると思ってください。日本ではダックスフンドの飼育頭数が急増した2002年ころから盛んに学会などで報告されるようになりました。当時の臨床現場ではこれまで遭遇したことのないダックスフンドの病気として話題になりました。実際、獣医学の教科書を見てもほとんど載っていませんでしたので治療法や今後の見通しなど分らないことだらけでした。
 欧米の論文を調べるとオーストリアの先生が1977年に報告されています。右の写真がその論文です。ここでは「Metaphysare Tibiadysplasie」と呼ばれています。アメリカの報告では「Pes Varus(内反股)」として呼ばれているようです。20年以上前のヨーロッパで現在の日本と同じ病気が写真付きで報告されていたのには驚かされます。
 

すねの骨が曲がってしまう病気です
 外 観
 脛骨異形成症という名称の通り、本疾患は脛骨(すねの骨)が曲がってしまう病気です。脛骨の足首に近いところが内側に曲がっています。患者は曲がった足でも歩かなくてはならないために個体ごとに工夫して適応しているようです。多くの患者では右の写真のように後ろ足の左右の幅を広げ、少し膝を開いて歩く子が多いように思います。ロングヘアーの子はおしりの毛が長いために湾曲が分りづらいことがあります。毛を持ち上げてみて観察する必要があります。自宅でのチェックで脛骨異形成症が疑わしいと感じた時は改めて動物病院で診察を受けるようにしてください。

先天的な疾患ではありません
発育期疾患です
 家族に脛骨異形成症の説明をすると、「この病気は生まれつきの病気ですか?」とよく聞かれます。本疾患は早くて三ヵ月令くらいから湾曲が始まりますが脛骨異形成症の子も二ヵ月令くらいまでは湾曲はありません。ですので「先天的ではなく発育期疾患です」とお答えしています。発育期疾患とは、成長過程で病気になる病気のことです。
 骨の成長する部位を成長板と呼びます。右の写真は二ヵ月令のダックスフンドの脛骨です。イラストでは成長板障害を示しています。脛骨異形成症は脛骨の足首に近いところの成長板の内側だけが障害を受けることによって発生し黄色の矢印のように成長に伴って湾曲が進行します。この変形は3ヵ月令くらいから進行し、8ヵ月令くらいで止まります。ですので8ヵ月令以上の子で脛骨異形成症だと診断された場合にはこれ以上進行することはありません。


×印が障害された成長板。障害された部分は成長が止まり、残った部分が成長を続けるため黄色矢印の変形が起こる。

当院でのリサーチ
 原 因
 脛骨異形成症の原因についてまだ分かっていないことが多いのが現状です。
当院では2006年に遺伝性について調査を行い近畿地区連合獣医師会にて報告しました。当院に来院した患者さんに協力いただいて、脛骨異形成症20頭、正常脛骨20頭の血統証明書を収集し脛骨異形成症の発症個体の祖先が重複していないかどうかを調べました。これは遺伝の中でも「家族性」というものに着目した調査です。遺伝性疾患では同家系での発生が多くなりやすいものですが、家族性というのは特に親から子、兄弟同士での発生が多い場合に用いられる言葉です。 このリサーチの結果では、強い家族性は認められませんでした。 脛骨異形成症ではダックスフンドという同一犬種での発生が見られることから遺伝子の関与を強く疑いますが家族性が低いことを考えるとその遺伝性は単純なものではないようです。
 今後、日本のミニチュアダックスフンドから脛骨異形成症を無くすため、当院では患者さんに対して繁殖は断念してもらうよう家族にお話ししています。

<JKC血統証明書>

歩き方と外観で 
 症状
 脛骨の変形が顕著になってくるのは生後4-6カ月頃です。多くの家族が愛犬の歩き方もしくは足の形の異常に気づくのもこの時期です。この時期の症状が一番強く現れるのですが8-10ヵ月令になると自然な歩き方になる子も多くいます。こういった子たちは変形がなくなったわけではありません。変形した脛骨に慣れて上手に歩くことが可能になった適応能力の高い個体であると思われます。
 もし愛犬が脛骨異形成症と診断され、年齢が6ヵ月令くらいであれば2-3か月様子を見てください。歩き方が自然に良くなるかもしれません。手術は1歳になっても問題なく実施できますし手遅れにはなりません。

<良く聞かれる症状>
   ・腰を振って歩く(モンローワオーク)
   ・クネクネ歩く
   ・立ち姿がガニ股である

手術は必要?
 治 療
 様々な考え方があると思いますがここでは当院の治療方針を説明します。
 当院が重要視しているのは症状です。膝蓋骨外法脱臼を伴っている個体も多くいますがこれも直接は治療方針に関与しません。湾曲が重度であっても日常生活に支障なく歩いている子もいれば、少しの変形なのに足が絡まって転倒したりする子もいます。膝蓋骨脱臼があっても知らん顔して普通に歩いている子も多くいます。
 症状が強ければ手術をお勧めしています。変形矯正手術を受ければ湾曲がなくなり歩き方も正常化します。力強くダッシュできるようになります。
 診断されたのが8ヵ月令以上であれば現在の症状が一生涯続くことになります。どこまでの症状を許容するかどうかを決めるのはしゃべることができない愛犬の代弁者である家族です。是非慎重に検討してください。迷っているときは獣医師に相談してください。

<手術前>

<手術後>

ハイブリッド法といいます
 変形矯正手術
 脛骨異形成症に対する変形矯正手術はさまざまな術式が報告されています。
 当院ではハイブリッド法という術式で変形矯正を行っています。本法は当院で開発した術式であり、世界獣医整形外科学会(米国2006)を始め国内での学会などでも報告しました(「当院スタッフの学会発表など」を参照のこと)。ハイブリッド法の優れているところは脛骨の曲がりだけではなく、ねじれも矯正し、またその微調整が容易であるところにあります。変形矯正術においては手術中に決定した骨の形でその患者は一生過ごすことになります。見た目にまっすぐにすることも重要ですが、肢の動きに不自然が出ないよう細心の注意を払います。固定具で固定した足はサイボーグのようですが、ほとんどの症例で装着中も不自由なく歩くことが可能です。
○術式 (ハイブリッド法)
         脛骨遠位開放骨切り術+ハイブリッド型環状固定法
○固定期間  1-2ヶ月間
○費用     約18万円(手術料金+入院7日)

このページは作成途中です。診療の合間を縫って書き足していきます。
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