エキスパート・デック
（Expert Deck）

★現象
観客に一枚のカードを選んでもらい、デックに戻します。観客に好きなだけシャッフルしてもらったあと、演者はある数字を口にします。その数字の分だけカードをめくると、観客の選んだカードが出てきます。

★解説
　ヘイム・ゴールデンバーグ師の考案です。

ミスターマジシャンのカタログ説明にあるとおり、今まで使われたことのない細工が施されています。
わたしのようなへっぽこギミック厨房には、その仕組みはわかりませんでした。
ただし、とある人にお見せしたところ、即座にトリックがバレてしまいました。
とはいえ、これはレアケースだと思います。

また、技術不要であるのはたしかですが、それはあくまでこれまで使われてきた技術が不要という意味であって、
まったく練習もなく使いこなせる、というわけではありません。
むしろ、ある技術が必要です。

レギュラーデックと何ら変わらないので通常のマジックを演じることができます。
ただし、ある種の消耗品なので、使いすぎるとトリックデックとしての機能は失われます（すぐ失われるというわけではありません）。
「補充」はそんなに難しくありません。

(2005.5.2　追記）
ウェブ上に見られるこの「エキスパートデック」をめぐる言説は、その大半が否定的なものです。
厳しいものだと「とても商品とはいえないシロモノ」というものさえも。

しかし、わたし自身はそこまでひどいアイテムだとは思っていません。
この値段は高すぎるとしても。
そこで、このトリックの名誉をわずかなりとも回復するために、少し文章を書き足してみたいと思います。

問題点　可能／不可能
まず、本当にこのトリックが可能なのかどうか、という批判があります。
ただ、拙サイトではないところで言ったこともあるのですが、わたしがミスターマジシャンで実演を見せていただいたときは、
根本さんは何度もばっちりその枚数を当ててしまいました。
ただ、一度二度、少し数がズレてしまうこともありましたが。

根本さんのお歳は存じませんが、お孫さんが中学生ということを考えると、それなりのお歳です。
キャリアがおありとはいえ、肉体的にはこのサイトをご覧の多くの人よりもハンディキャップがあるはずです。
にもかかわらずカードを当てて見せたということは、練習によってこのトリックがどうにかクリアできる可能性が高いことを示唆しています。

問題点　正確な位置
おそらく、この商品に対しての批判のほとんどは「どこに任意のカードがあるのか、正確な数字がわからない」という点に集中するでしょう。
逆に言えば、正確でないにせよ、だいたいの場所はわかる、ということでもあります。

とすれば、だいたいの場所を狭めていけば、任意のカードに行き当たる、ということになるはずです。
また、フルデックで「場所」を指摘するのが難しいにせよ、十枚以内であればおおむね数字はかなりはっきりするはずです。
それが五枚になればなおさらです。

このような指摘に立ち、以下のようなルーティンを提案します。

�@観客に一枚のカードを選んでもらい、戻してもらいます。
演者がシャッフルした後、観客にもシャッフルしてもらいます。
�Aデックは返してもらいます。観客の一人にデックの半分ほどを持ち上げてもらいます。
�B同様に、この動作を繰り返します。もしも観客が持ち上げたところに�@で選ばれたカードがあった場合は、
そのカードを見てもらいます。そうでなかった場合、�Aの動作を繰り返し、カードが十枚以内になるまで繰り返します。
�C残ったカードを一枚ずつ表向きにしていきます。このとき、観客に、選んだカードが出てきたときには口には出さず、そのカードを心の中で指摘してもらうようにお願いします。そして、すべてのカードを表向きにしたあと、観客が選んだカードを指摘して演技を終えます。

いかがでしょうか？
率直なところ、いまさらこの商品を買おうという人はまずいないと思います。
が、単に駄目トリックとして忘れられ、捨て去られるのを見逃すのは忍びなかったので、このような案を示してみました。
もしも道具入れにこのトリックが転がっている人がいらっしゃったら、少し触ってあげてください。
もしかしたら、意外に使える道具になるかもしれません。

★相性のいいアイテム
上記の現象の位置づけをどうするかで手順そのものは変わってきそうです。
最初に軽く演じて、このあとにアンビシャスカードを演じたりバック・トゥ・バックを使用したりといった普通のマジックの中に組みこむのか。
もしくはメンタルマジックとして超魔術風の味付けをするのか。
できたらいいな、と思うのはこのあとブリザードでカードを真っ白くしてしまう、という手順ですが。
◆バック・トゥ・バック
◆ブリザード

2004.4.1

★価格帯

★評価