02.


それから二人は、ボガードに教えられた通りに洞窟を抜け、ウェンデルへの道を急いだ。しかしその道すがら、一夜の宿を借りた古い館――リィという名の伯爵の館らしい――で事件が起きる。
目覚めてみればデュークの隣のベッドで眠っていたはずのエレナの姿がない。慌てて同じように館に滞在していた旅人に話を聞くと、この館では時に若い女が姿を消すという噂があるらしい。
館の執事に尋ねれば、「お連れの方?さあ…。」という曖昧な返事。
途方に暮れていたデュークに救いの手を差し伸べたのは、魔法使い風の旅の男だった。


「あの屋敷の地下にはたくさんの棺桶が並んでるって話だ……助けに行くなら手を貸すが?」
「本当か?それは助かる。……でも、どうやって?手掛かりも何も無いのに。」
「あの執事。人の姿をしているがモンスターが化けているようだ。確か、この館の北東にある沼の洞窟に、真実を映し出す鏡があると聞いた。そいつを突きつけてやれば、化けの皮も剥がれるさ。」

赤い旅人帽を目深に被り、同じ色のマントに身を包むかの男は、にやりと笑って言った。

「……手掛かりも無いし、ダメで元々だ。その、沼の洞窟まで案内してくれないか?」
「ああ、構わんよ。」

男はデュークの頼みにあっさりと頷き、二人は沼の洞窟へと向かうこととなった。




「それにしても、何故見ず知らずの僕を助けてくれるんだ?」

洞窟へ向かう道すがら、デュークは疑問を男へ投げかけた。すると男はくっ、と笑って言った。

「……面白そうだったからさ。」




旅の男の魔法は強力だった。
洞窟には多数のモンスターが潜んでいたが、男の炎の魔法で次々と倒されていく。
あまりに鮮やかで美しいその炎の軌跡に、デュークは思わず剣を振るう手を止めて見惚れてしまうことも多々あった。
暗い洞窟の中、赤々と輝くその光にモンスターたちは吸い寄せられるように近づいては、あっという間に消し炭と化す。
美しさと相反する残酷さを操る旅の男は、疲れた様子も見せず、ただ満足げな微笑を浮かべるのだった。
そんな調子で二人は順調に洞窟の奥に住み着く二つ頭のヒドラを倒し、目的の真実を映し出すという"月の鏡"を手に入れることに成功した。

「そいつをあの男に突きつけてやるといい。きっと正体を現すぜ。……じゃ、俺はもう行くぜ。上手くやれよ。」
「ああ。ありがとう、助かったよ。」

デュークは先を急ぐのだという男と握手を交わして別れ、一路館へと足を速めた。




旅の男の言った通り、奥へと続く部屋の前に立つ執事に月の鏡を見せると、獣の姿へと身を変えた。
デュークは獣を退け、館の奥へと進む。そして地下の棺桶の並ぶ部屋に閉じ込められていたエレナを見つけた。


「エレナ!助けに来たよ!」
「デューク!心細かったわ…ありがとう、助けに来てくれて。」
「こんな所、早く出よう。」

デュークはエレナの手を取り、急いで部屋を後にした。




その後、二人は館の出口でこの館の主と対面する。
リィ伯爵――かつてよりこの屋敷に居を構える、ヴァンパイアがその正体であった。
正体を見せた吸血鬼は、獲物を逃すまいと彼の使い魔である蝙蝠と、自身の鋭い爪でデュークとエレナを襲いかかった。
苦戦を強いられた二人だが、エレナの癒しの魔法と、デューク自身の剣の腕が上がっていたこともあり、また沼の洞窟で不死の怪物に強いファイアの知識を得ていたことも幸いし、何とかリィ伯爵を退けることが出来た。

ヴァンパイアの呪縛の解けた屋敷からは、それまで重苦しく覆っていた邪悪な気配も消え去ったのだった。



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