どらやき。


りとるれでぃ。 第三話



「ハ〜ク〜ラ〜……」

私の作戦はこうだ。
まず真っ先に言えに走って帰る。
友達は無視。先生も無視。担任の説教で小一時間無駄にしたけどまだ範囲内。
そして真っ先に帰ってすぐに服を脱いでクリーニングに出そう。
お金は…………カード使えたかな…ぁ、でも少しくらいならあるか。
……お父さんのカードは確か………書斎の2つ目の本棚の4つ目の列の本『妖精症候群』の269ページ目に挟んであったはず…
お父さん大丈夫かな……この前も勝手に使っちゃったし。
お姉ちゃんは構わないって笑ってるけど…まぁいいや。
それでお姉ちゃんが帰ってくるまでに急いで仕上げて貰おう…
クリーニング屋のお兄さんとは知り合いだし、特別にやってもらえば………部活のあるおねえちゃんよりは早く帰れるはず。

……だったのに。


「あら、ハクラ?気のせいかな…あなたのスカートに赤い染みが着いてるわ。
しかも綺麗な白色のフリルの部分に。お姉ちゃんそのフリル好きなの。
それを着てすごく似合ってるハクラがすごく好きなの。
でも…その染みは血よね?血って落ちにくいの知ってるわね?」

「…お、姉ちゃん………」

「大変ね、ハクラ。その服…暫く着れないわ。
いくらあの男でも落としきるには少し時間がかかるの……残念だわ…
それまでその服を着たかわいいあなたが見れないのね……この悲しみ……
どうしましょう……」

(………ダメ…怒られる)

「ハクラ…学校でケンカしたのね…怪我は無い?
私のハクラに傷が付いたら大変……」

「だ…大丈夫……ちょっと顔を叩かれたけど大丈夫だから…」

それを聞くとお姉ちゃんはしゃがんで私をギュッと抱きしめてくれた。

「…ハクラ……ごめんね、お姉ちゃんが守ってあげれなくて…
ハクラの可愛い顔に傷が付いちゃったね…………誰がやったの?ソレ」

「クラスのヨウジ君って子…いじめられてあげてたら逆に怒っちゃったの」

フフフ、とお姉ちゃんは静かに笑った。

「ヨウジ君、ね。いいわ…この話はとりあえず終わりにしましょハクラ」

そして抱きしめていた腕を離すとそのまま自然に私の首をなめらかに触ってきた。
顔は私の横にあるから表情は見えない。感じるお姉ちゃんはまだ優しいお姉ちゃん…だった。

「でもね、ハクラ…いじめられたのとコレは違うわ…可愛いハクラ」






「次服汚したら殺すって言ったわよね…その服、すごく高いの知ってるわよね………」






やっぱり…おねえちゃんはいつものおねえちゃんだった……

「私はね、あなたに可愛い服を着て欲しいの…着させてみたいの…着せたいの」



私から楽しみ奪うなんて、いい度胸してるじゃない…ハクラ?



ガッ


襟を捕まれ壁に叩きつけられる。
相変わらずすごい力……呼吸が…できなくなりそう。

「これクリーニングに出すし構わないわね」

ぐりぐり……

「感じてる?喉少し下の窪み、つまりはこの部分ね。
親指に少し力を入れて押すだけで…」

グッ

「ぁ…っ……」

「ね? 意外と痛いの」

力を緩める。

「はっ、はっ……ぁはっ…はっ…………」

呼吸が続かない…喉が狭くなったみたい。呼吸が難しい…

「……いいわ、ハクラ」

はぁ…はぁ……はぁ……

「可愛いわ、今のハクラすごく可愛い。荒い呼吸、虚ろげな瞳…
はだけたドレス……素敵、すごく…素敵……可愛いわ、ハクラ♪」





「もっと見せて、今のあなたを。今まで以上のあなたを…
私だけの、私の、可愛い可愛い愛しのハクラを」



「お姉ちゃん…お姉ちゃん……ごめんなさい…ごめんなさい…
もうしないから…二度と服汚さないから…」



もっとハクラを構ってぇ……



〜終わり〜