どらやき。
SUMMON NIGHT SS #02
〜私のひだまり〜
ピピピ……
無機質な音が鳴り響く。
綺麗に並んだボタン、複雑そうな配線、大きなモニター。
ここの機械はいつ見てもすごい。本土でもこれほどの物は滅多に見られない。
何がすごいかと聞かれればたくさんありすぎて何が何だかわからないくらいすごいということだ。
子供のような感想だが正直に述べるとそうだ。
周りをただただ見回す。
すると機械達に囲まれて椅子にもたれ掛かっている女性と目が合う。
「あら、どうかしたのアズリア?」
アルディラはコーヒーを飲みながら笑みを浮かべている。
私がここに顔を出すのが珍しいのだろう。奥からクノンもやってきた。
「おはようございます、アズリア様」
「あぁ、おはようクノン」
彼女に習って簡潔に挨拶を済ます。
クノンから入れ立てコーヒーを受け取る。
クノンが入れてくれるコーヒはおいしい。本土でも何度か有名な店に足を運んだが
彼女ののコーヒーはそれに勝るとも劣らない出来だ。
コーヒーを味わいながらソファに腰を下ろす。窓の外から聞こえる鳥のさえずりが心地よい。
「で?」
突然アルディラが会話を始めた。
クノンは奥の部屋で仕事をしているから必然的に今の言葉は私に向けられたものだ。
「何か用があったんじゃないの?」
アルディラはメガネを軽く上げ下げしてこちらを向いた。
「あぁ…」
私も飲み終えたコーヒーカップをテーブルに置き用件を済ます。
「今から外に出ようと思ってな、一応声をかけにきたんだ」
立ち上がり壁にかけていた剣を手に取る。
「わかったわ、気をつけてね」
「ああ、いってきます」
「フフフ」
アルディラが小さく笑う。
「何かおかしいことでも言ったか?」
アルディラは穏やかな笑顔で優しく言った。
「あなたからでかけることを言いに来るなんてって思ったら自然と、ね」
彼女は私の頬に手を当てニコリと微笑んだ。
「いってらっしゃい、アズリア」
「―――――」
一瞬、胸が熱くなった。
―いってらっしゃい―か…
リペアセンターを後にし、ラトリクスの出口へ歩く。
アルディラが言った何気ない日常の一言。それがこんなにも懐かしく感じるとは…
軍人になると誓ったあの日…勉強に明け暮れたあの日々…
私の側にはいつもあいつがいた。
いつもあいつは私が消えないように、周りの重圧に押しつぶされないように、気をつかってくれた。
いつかあいつが言っていたな。
「アズリアには自分を支える木が必要なんですよ、きっと」
まるで自分のことのように胸を張って言い切ったあいつ。
私ですらそうなのかもと思ってしまった。
遠い日のひだまり…
それは陽炎のように儚く消え、もう二度と戻ってこないと思っていたあの日々。
「アズリアー!!!」
ラトリクスの出口で大きく手を振っているのが見えた。
あいつの笑顔は昔から何も変わっていない。
「全く…アティらしい…」
アティの顔を見るたびに心が満たされる。
思わず笑みがこぼれる。アティにもそれが見えたのか、一層の笑顔で私を迎える。
「おはようございますアズリア」
「おはよう、アティ」
いつもと変わらない日常の一コマ。
でも私はこの時をずっと望んでいたんだ。
何も背負わず、何にも縛られず。
ただ、自分のため、想う人のため、過ごしていける時を…。
「今日は私の訓練に付き合う約束だぞ」
おのずと言葉が弾む。
「えー、今日はお天気もいいし、浜辺でお弁当食べましょう。ね、それがいいですよ」
言うや否や私の手を掴みどんどん歩いていく。
手を通して伝わる暖かさ。
もう決して手放しはしない。
わたしの日常。
私の「いつも」…
私の、ひだまり……
〜おわり〜
アティ&アズリアぱーと2です。
こたつでぬくぬくしてたら浮かびました。。
wwww(´▽` )電波の神様アリガトウ。
ぽかぽかぬくぬく、皆さんはそんなひだまりをお持ちですか?