どらやき。
SUMMON NIGHT SS #06
「アズリア、アズリア!!!」
穏やかな昼下がり、原っぱを駆け抜ける風とそれに身を寄せる草木。
それだけしか聞こえないまったりとした空間は、突然奪われたのだ。
〜騒がしい日々〜
「…アティ、私が今何をしているか見て分かるか?」
「私の夜這いを待っ「昼寝をしているんだ!!」てい…」
原っぱの木にもたれて眠りかけていた彼女は突然の襲撃によりそのタイミングを奪われたのだ。
「もう、こんな良いお天気の日にお昼寝なんて不健康ですよ?」
「毎晩ベッドに不法侵入しようとする奴がいてな、寝不足なんだ」
「!? アズリアのベッドにですか、だ…誰ですか!!」
ズビシッ!!!
アズリアの的確な手刀がアティの脳天にヒットする。
「お前の他に誰がいる誰が…」
襟首を持ち上げてアティに迫り寄る。顔は笑っているが口調が既に臨戦態勢だ。
それを感じ取ったのかアティはひとまず現状の回復に努めることにした。
「ま、まま…落ち着いて下さいアズリア。こんないいお天気ですし怒ってちゃお天気も逃げてしまいます。
ささ、とりあえずお茶でも飲んで」
と、手に持っていたバスケットから飲み物を差し出す。
こんな時に、とは思ったが怒鳴りすぎて少し喉が痛い。
仕方なくアズリアは飲み物を受け取った。
暫しの静寂が辺りを包み込む。
でもそれは嫌な静寂ではなく、心地よい揺りかごのよう。
アズリアはただぼうっと風に揺れる草木を眺めている。
アティもそれに習いただ見ていた。
こんな日があってもいいと、アズリアは思った。
普段は何かと忙しい。
アティは先生をしているわけだし、私もつい最近、みんなに剣術や体術を教えるようになった。
教科は体育ということになるそうだが。
「あぁ、そうだ」
何かを思い出したようにアティに顔を向ける。
自ずとアティもアズリアを見る。
「何か用があったんじゃないのか?」
するとアティは思い返したように手をポンっと叩いた。
「そうですそうです、思い出しました」
相変わらず動作の一つ一つが大袈裟だなとアズリアは思っていた。
騒がしいと思う反面、かわいらしいと思ってしまう。
同じ女なのにこうも自分とは違うものなのか。
彼女を思うたびにそう実感してしまう。
「5月ですよ、5月!!! アズリア、今は5月なんです」
「……ああ、5月だな。で、だから何なんだ?」
「5月といえば子供の成長を祈るんですよ、スク水なんです …間違えましたスクスクなんです」
はぁ……とアズリアはイマイチ理解できない。
子供の成長とアティのハイテンションが全然結びつかない。
(子供……アリーゼ達か?
でも今更騒ぐことだろうか。
成長を祈る、なんて年がら年中している気がするし、それより生徒達の為でここまでハイになるものか…
今までは多少喜んではいたがここまでいかなかったし、何より私に言ってきたこともない。
大概事が始まってから巻き込まれるんだが…)
「生徒達のこ…」
「子供作りましょう、アズリア!!!!!」
「…とか?」
………
……
…
「すまん、今ひとつ聞き取れなかった」
「だから、子供を作るんです。私と、アズリアの子を!!」
ホント……同じ女でどうしてここまで違うんだろう……
「ば…バカかお前は!! 何を考えてるんだ!?」
「勿論、私とアズリアの未来です!!」
「その前にもっと考えることがあるだろう!!」
「大丈夫です、新しい家も生活用品も既に取りそろえてます」
「そこじゃない!!」
「ちなみに新しい家はラトリクスの使われてない建物を譲って貰いました」
「お前は使ってない脳みそを使え!!」
「壊れてたところは全部直しました、抜かり無しです!!」
「お前の脳みそ治してこい!!!」
さっきの静けさは何処へやら。
騒がしい声が響き渡る。
決して、決して第三者に聞こえてはならないだろう内容が島中に聞こえるんじゃないか的音量で木霊する。
「子供を作るんです、アズリア!! 作るんです子供を!!」
「2度言っても無理な物は無理だ!!」
「大丈夫です!! 気合でどうにでもなります!!」
「気合で命の原則が曲がるものか!!」
「アズリアは私との子供欲しくないんですか!?」
「作れるものかぁ!!」
「あんなに愛してるって言ってくれたのに!!」
「言った覚えもないわっ!!」
会話は平行線のまま。
若干アティの言い分がムチャクチャになってきた様子。
アティが引くか、アズリアが疲れ果てるか。
いつもならアズリアが疲れて諦めるのが多いのだが今回ばかりはそうも言ってられない。
そりゃそうだ。
なんていったって自分の未来がかかっているのだ。
「アズリアァー」
「絶対無理だっ!!」
結局日が水平線の無効に沈みきるまで続き、この騒動は全ての住民に聞かれたのだった。
〜おわり〜
= あとがき =
……ま、天気がよかったからこんなに壊れたんですよキット(ぁ
アハハハハ。。。
―葉桜