どらやき。


紅魔館のハロウィン








「Trick or Treat!!」

振り返るとそこにはカボチャを持った妹様がいた。



『紅魔館のハロウィン』



10月31日。今日はハロウィンだ。
それを何処で知ったのかは知らないが、妹様はそれを少し歪んで捕らえているようだ。

「こう言うとお菓子を貰えるのよね、咲夜」

と。

つまり妹様は誰からでもお菓子を貰える素晴らしい祭りだと捉えているのだ。
まぁ、間違ってはいない。
今日日、ハロウィンの意味なんて陳腐な物だ。
そも、ハロウィンの本当の意味に犯しなんて用語は入ってなかったと思う。

「咲夜、咲夜♪」

エプロンを鷲掴みにしてはしゃぐ妹様。
…まぁ、子供が喜ぶ祭りに代わりはないのだけれど…

「今夜はハロウィンっぽいご飯が食べたいっ!」

お菓子だけでは駄目なようだ…
その程度なら今すぐ戸棚のビスケットを取ってくるのだが…

…しかしハロウィンにちなんだ。夕飯か。やっぱりカボチャだろうか。
と、なるとパンプキンスープ?
カボチャの…煮付け?
…………地味だわ。
ではなくて、

「妹様、紅魔館でハロウィンはちょっと」

えー、と叫ぶ妹様。
ゃ、私としてもやるのは構わないのだが。
多分ダメ、と言う人が1名。








「ダメよ」

かくして妹様の輝ける瞳は終わりを迎えるわけで。

「えー、お姉様…どうしてぇー」

それでも食い付く妹様。
お菓子の執念か。

「クリスマスを祝う悪魔がいないのと同じよ」

そう。
私の記憶が確かなら確かハロウィンは悪魔や精霊を信じていた時代に魔除けとして火を焚き、仮面を被るという意味合いを持っていた。
そこに宗教色が加わり色々と地方別に足し点けられたと聞いているけど…
大本は、悪魔払いの儀式だった。

「そう、咲夜の言う通りね。わかった、フラン?」

「全然わかんない!」

「頑固ね、フラン…」

おー…今日は妹様もなかなか引き下がらない。
だけどこのままだと姉妹喧嘩になり兼ねない…
それだけは阻止しなくては…主に私の仕事の為にも。

「困っているようね」

右往左往する私の横に、いつの間にか佇むパチュリー様。
お嬢様と妹様を交互に見ながら私をちら見。

「ハロウィン、ね」

「そう、そのハロウィンを紅魔館でしようと言うのよ。フランが」

パチュリー様に「あなたも反対でしょ?」と視線を投げかける。
が、返ってきたのは意外にも

「いいんじゃないかしら」

妹様へのラブコール。

「パチェ、あなたね……」

「さすがパチェ!」

再び瞳を輝かせる妹様とちょっと肩が重くなったのか 猫背のようになりパチュリー様をじと目で睨むお嬢様。

「いいのよ、レミリア。紅魔館でやったって」

「ふぅん…なら聞こうかしら。その理由を」

腕組みをする。
「つまらなかったら許さないからね」そんな感じ。

「咲夜の言ったハロウィン、悪魔払いっていうのは二次的なものよ。
二の次。もしくは当時の世界観に合わせたこじつけかもね。
本来は秋の収穫祭という意味合いを持つのよ」

「その為のカボチャですか」

「カボチャは知らない。でも火を焚く理由はそれ。
動物や作物を焼くのも感謝の印らしいわ。」

「なるほど。食べ物の神様を祭る火が同時に悪魔払いの意味も持ってしまったんですね」

「レミリアは、食べ物に感謝しないのかしら?」

「むむむ…」

「それなら来年の紅茶は不作ね」



3対1。
結果的にお嬢様は紅魔館のハロウィン祭を許す形になってしまった。
せめて私がお嬢様の味方をすれば良かったのだけど…
エプロンを妹様に掴まれ、パチュリー様に横を固められては反対とは言えないわけで。

「お姉様、お姉様。Trick or Treat!!」

「あるわけないでしょ」

「えー!!」

頬を膨らませながら地団駄を踏む。
それは…そうだろう。
ハロウィンに反対していたお嬢様が、どうしてお菓子を持っているというのだ。
妹様には申し訳ないが、今は少しだけ我慢してもらおう。
後で何か……戸棚のビスケットはあっただろうか。

「フラン」

まだまだ納得がいかずわめく妹様の口を塞ぐ。
それは、ビスケットだった。

「ほふぇーはは?(お姉様)」

「今はそれで我慢しなさい。いいわね」

「うん、ありがとう。お姉様」

お嬢様のポケット、そこにはビスケットが入っていたのだ。
パチュリー様と2人して笑ってしまう。
なんだかんだ言って実は…と。








「ふぅ…全く……フランったら」

寝室でイブニングティーを飲むお嬢様。
ただ、先程から紅茶半分、愚痴半分、だ。

「でも、ちゃんとビスケットをお持ちになっていたんですね」

先程の居間での件を思い出す。

「偶然って怖いものね」

「そういう事にしておきましょうか」

何か引っかかる言い方ね、とまた愚痴が始まる。
なんだかんだ言ってお嬢様は妹様を溺愛している。
だけどそれを表に出そうとしない。
まぁ、それすらも私達からしてみれば丸わかりなのだ。
わかっていなさそうなのは…妹様本人だけかしら。

「ねぇ、咲夜」

「はい、何ですか?」



「Trick or Treat?」



「ぁ…」

紅茶の入ったカップをユラユラと目の前で遊ばせる。

「すみません、生憎今は…すぐにお持ちを!」

「あら、残念ね…」



だったら、悪戯をするしかないわね♪





〜おわり〜










 

= あとがき =

ハロウィンだと思い出したっ!!
と、言う事でハロウィンss。
毎年ファミマとかローソンのハロウィン菓子を買うのがお約束。
カボチャシュークリームは個人的に有りだと思います。。

―葉桜