どらやき。
紅魔館のクリスマス
「メリー!!」
「クリスマーースッ!!!」
ハロウィンの悪夢再び。
陽気で明るい声に振り返ってみれば其処には二つの人影。
フランと…美鈴がいた。
「……聞く必要もないけど、前フリは必要よね。今度は何かしら?」
聞くまでもない…というよりさっき大声で叫んでいたし。
しかし、このまま素通りは出来そうもない。
二人の目がキラキラと輝いているし、美鈴は何故か背中に小さなもみの木を背負っている。
何処から手に入れたのか……
「お姉様知らないの?」
「お嬢様ご存じないんですか?」
「「おっくれてるぅー!!」」
「……美鈴、お前誰に対して言ってんだコラ」
「すみません、調子乗りました!!」
調子に乗った門番にとりあえず釘を刺す。
ホントに刺しても良かったのだがその場合背中のもみの木の処分に困る…感謝するといい。
もみの木に。
「で、あなた達の言いたいことは?」
「クリスマスだよ、お姉様!!」
鼻息荒く後ろで美鈴が首を縦に振る。
やっぱりか………レミリアは前回のハロウィンを思い出した。
あの時も私は反対した。
しかし、結局紅魔館で反対したのは私だけ。
咲夜もパチェも……何故か賛成してしまい結局何の因果か吸血鬼の住む屋敷でハロウインをする羽目になった…
(楽しかったけどさ……)
と、言うことは大方今夜の騒ぎはクリスマスパーティといったところか……
「お姉様〜、クリスマスパーティしようよ〜」
「そうですよお嬢様。一年に一度なんですし!」
ふむ、とレミリアは腕組みをして少し考える。
私だってそこまで頭が固いわけではない。
楽しいこと、面白いこと、みんなの笑顔は好きだ。
今のところ…反対する理由は個人的には無い。
悪魔がクリスマスってどうよ? とも考えるが
そもこの中で一体何人がクリスマスの本当の意味を知っていてそれを祝おうとしているだろうか…答えはゼロだ。
(だったら……私がそれを理由に反対するわけにもいかないか)
「咲夜?」
フラン達の後ろ、廊下に目をやる。
何となくそんな気がした。
彼女はもう既に一枚噛んでいると。
「お呼びですか?」
案の定、呼ばれることをわかっていたのか驚いた様子も無く、いつも通り平然と姿を現す。
「パーティを許可するわ、どうせなら盛大にしなさい」
どうせならこじんまりするより派手にした方が良い。
ケーキだけと言わず、食事も豪華に。
飾り付けも屋敷全体に。
やるからには妥協無し、徹底的に楽しむ。
それがレミリアの娯楽に対する美学だ。
「かしこまりました」
「では支度なさい。二人も、言い出したからにはガンバリなさい」
「「お〜!!」」
三人は別々に去っていく。
咲夜は食事の支度をしに。
フランは飾り付けを。
美鈴はもみの木を埋めに。
……何処に埋めるのかが気になる。
明らかに彼女が走っていった方向は 屋敷の中だ。
「珍しいのね」
やることもなくなり部屋に戻ろうとしたレミリアをどこから沸いて出たのか、はたまた最初からいたのかパチュリーが呼び止める。
「あら、いたの」
「クリスマスを許可するなんて、どういう風の吹き回し?」
「別に、私が反対しても…どうせパチェと咲夜は味方してくれないのでしょう?」
やれやれ、と首を横に振り苦笑する。
パチェはどうか知らないが咲夜はフランに甘い。
気が合うのか、フランが何か企てる時は大概咲夜の入れ知恵 だったりもする。
「ただ私は、皆で騒ぐのは良いことだと思うだけよ」
「まぁ、それには賛成するけどね」
「今、私は毎日が楽しいわ…永遠という言葉が霞むくらいに」
「それは、いい事じゃない」
カーテンを捲り、窓を開ける。
外気の冷たい風と共に白いものが廊下に降り注ぐ。
「あら…」
「ホワイトクリスマスね」
窓の外は白い雪。
このまま暫く眺めていたいと感じる程に、 その色は綺麗だった。
「メリークリスマス、パチェ」
「メリークリスマス。レミィ」
「そういえば、レミィ」
「なに?」
「一つだけ勘違いをしているわ?」
「???」
「咲夜はどうかしらないけど、私はフランドール達の味方 をしているわけではないわよ」
「……その割りには私の味方をしてくれた記憶がないのだけど…?」
「そうね、だって」
「一人寂しくいじけるあなたを見るのが楽しみなんですもの」
〜終わり〜
= あとがき =
と、いうわけでクリスマスssです。
ちなみに。
うちの周りには雪なんてこれっぽっちも降りません。えぇ。
―葉桜