ここは 「人権教育のための国連10年」奈良県行動計画 第1章 基本的な考え方
http://www5.kcn.ne.jp/~jkobi/yt-nap98-1.htm です。
1998年7月2日作成


「人権教育のための国連10年」奈良県行動計画 

第1章 基本的な考え方

 

1 行動計面策定の趣旨
 「すベての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。人間は、理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しなければならない。」と、1948年(昭和23年)12月10日、第3回国連総会において採択された世界人権宣言は、人類普遍の原理である人権につき、このようにうたっています。我が国の憲法も、平和主義、国民主権とともに基本的人権をその原理の一つとしてすべての国民に保障し、また、これを保持するための不断の努力を求めています。
 近年、あらゆる分野での国際化が急速に進展し、国家間の相互依存が大幅に深まるとともに、人種、民族、宗教をめぐる問題や環境問題など地球規模の課題への対応が求められるなか、平和で豊かな国際社会を構築するため、人権が国際基準として果たす役割は極めて重要であると考えます。また、地球環境を守り、自然との共生を図るためにも、人類の英知が強く求められているといえます。
 1994年(平成6年)の第49回国連総会は、人権という普遍的文化を世界中に創造することを目指し、「人権教育のための国連10年」の決議を採択しました。この「10年」は、生活文化を形成する最も重要な要素として、普遍的な人権をとらえています。すなわち、私たちの日々の暮らしのなかに人権を根付かせ、多様な文化や価値観、個性を尊重し合う民主的な社会を築いていくため、日常の行動につながる知識や技能の習得、態度の形成を重視していると考えます。
 国連の「人権教育のための国連10年」行動計画では、「すべての人権の不可分性と相互依存性を認識」し、また、「民主主義、発展及び人権が相互に依存しかつ補強し合うものであると認識し、『10年』のもとでの人権教育は、攻治的、経済的、社会的及び文化的な分野での一層効果的な民主的参加を日指すこととし、経済的及び社会的進歩と人間中心の持続可能な開発を促進する手段として活用されしる」と規定しています。
 我が国においても、「人種差別撤廃条約」への加入をはじめ、「人権擁護施策推進法」や「アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に開する知識の普及及び啓発に関する法律」の制定をみるとともに、「人権教育のための国連10年」に関する国内行動計画が策定されるなど、人権の尊重・擁護への取り組みが進展しています。
 このように、国内外の人権確立・擁護への取り組みが進むなか、本県においては、1997年(平成9年)3月に「奈良県あらゆる差別の撤廃及び人権の尊重に開する条例」が制定されたところであり、県民一人ひとりの人権が真に尊重される自由で平等な社会を築くために、「人権教育のための国連10年」への取り組みは極めて重要かつ有意義であると考えます。21世紀を「人権の世紀」とし、この「人権教育のための国連10年」を県民と共に積極的に推進するため、その指針となる本行動計画を策定することにしました。

2 人権教育の定義
 人権教育の定義は、1994年(平成6年)の第49回国連総会での「人権教育のための国連10年」決議と行動計画のなかで、次のように示されています。
 「あらゆる発達段階の人々、あらゆる社会階層の人々が、他の人々の尊厳について学び、また、その尊厳をあらゆる社会で確立するための方法と手段について学ぶための、生涯にわたる総合的な過程である」(国連総会決議)「知識と技能の伝達及び態度の形成を通じ、人権という普遍的文化を構築するために行う研修、普及及び広報努力と定義する」(国連行動計画)
 ユネスコの「国際理解、国際協力及び国際平和のための教育並びに人権及び基本的白由についての教育に関する勧告」(1974年(昭和49年))においては、「教育とは、個人及び社会的集団が国内的及び国際的社会において、並びにこれらの社会のために、各自の個人的な能力、態度、適性及び知識の全体を発達させることを意識的に学ぶ社会生活の全過程をいう」と、定義されています。
 これらのことから、人権教育とは、人権が尊重され擁護される社会を築くため、あらゆる人々が生涯のあらゆる機会を通じ、人権に関する正しい知識を習得するとともに、自分で考え判断し、話し合って問題を解決する技能を培い、これを日常の態度として身に付けるための、また、これらに取り組もうとする雰囲気を醸成するための、教育及び啓発であると考えます。

3 行動計画の基本理念
 この行動計画は、学校教育や職場研修はもとより、家庭や地域においても、あらゆる機会に人権教育が行われ、人権が人々の思考や行動の価値基準として日常生活に根付き、人間関係と社会関係の基本原則となり、人権という普遍的文化の創造を目指すことを基本理念とします。
 人権教育を行うに当たっては、次に掲げるような基本的な視点に留意することが肝要です。相互に不可分なこれらの視点は、人権問題が白分とは関係のないことではなく、私たちの生き方そのものにかかわるという意識・態度から、人権を守り育てる行動につなげていくために重要です。
(1)生きる力の育成
 生きているという充実感は、家庭や地域社会、職場で豊かな人間関係を築き、主体的に活動してこそ得られるものです。そのためには、自分の個性や可能性をよく理解して自尊感情をはぐくみ、持てる能力を発揮し、自信を持って自己表現することが大切です。文化・芸術、スポーツ活動なども自己表現の手段であります。
(2)さまざまな人々との共生
 人は、それぞれに異なる生活文化を持ち、個性や価値観も違います。また、民族や国籍の異なるさまざまな人々が共に暮らしています。しかし、これらの違いを否定して同質化を求めたり、同質なもののなかに、違いや序列を作り出しで排除するような状況がみられます。
 違いをありのまま受け入れ、共に学び働き、親交を深めるなかから、互いの尊厳への自覚が生まれ、互いを向上させることができます。個性を尊重し、多様な文化を認め合う意識と態度が必要です。
(3)人権意識の日常化
 だれもが「幸せに生きたい」と願っています。生命を大切にし、そのような願いを実現させることが人権といえます。人権は、日常生活のなかに当然存在すべきものあり、常に互いの人権を尊重するという視点で物事をみつめることが重要です。これまで、私たちが日常生活のなかで当然のこととして考え、受け入れてきた事柄についても、人権という物差しで判断し、行動していくことが大切です。
(4)人権侵害を許さない意識の醸成
 私たちの社会には、同和問題、女性問題、外国人問題などさまざまな人権問題が存在しています。このような人権問題の根底には、偏見・因習、世間体や家柄を重視する考え方、男女の役割分担意識、我が国は単一民族から成り立っているという誤った意識などが存在しています。
 人権侵害(差別)は、人を傷つけるだけでなく、自らの生き方をも狭めます。さまざまな人々と豊かな人間関係を築き、自分を向上させる機会を自ら閉ざしてしまうことになるからです。傍観することも人権侵害を許す結果になろことに留意し、すべての人々が人権侵害を許さない意識を持つことが肝要です。
(5)社会の基盤となる人権意識の確立
 人権は、人のいるところ、どこにでもある人間同士の基本的な関係として、人々の営みのなかに定着させることが大切です。人権を基本とした人間関係が広がってこそ、すべての人々にとって住みよい、豊かな仕会が実現します。人権意識が、日常生活のなかに広く根付くような社会づくりが重要です。

  4 人権教育を進めるに当たっての県の基本的な姿勢
(1)県民が主体となる人権教育の推進
人権という普遍的文化の創造を目指すためには、県民一人ひとりが日々の暮らしのなかで、主体的に人権学習に取り組むことが何よりも大切です。
 日常の生活そのものを学習の機会としてとらえ、人間の尊厳と社会正義に照らして、自分自身の考え方や価値観を問い直すことが必要です。世界人権宣言や国際人権諸条約等の精神や内容を学び、偏見・因習に惑わされない正しい知識を習得するとともに、人生の課題を考え社会問題に気付き、公正に判断して解決していく技能と態度を養わなければなりません。お互いを個人として認め合い、自己決定や自己実現する権利を尊重し合って、豊かな人間関係を築いていく技能と態度も重要です。県民こぞって人権意識に裏打ちされた行動をとることが、自由で平等な社会を築くことの第一歩になります。
 県においては、県民が自主的・主体的に学習や社会参加活動等に取り組む気運の醸成に努めるとともに、地域社会や学校などあらゆる場における学習環境の整備に努めます。
(2)人を大切にする施策の推進
 人権という普遍的文化の創造を目指すために、県の全部局が、あらゆる分野において、すべての人権が不可分かつ相互依存関係にあることを認識し、人を大切にする施策を総合的・複合的に一層推進することに努めます。県民の二一ズを的確に把握し、適切な情報提供を通じて県攻への参加を促すなど、開かれた県攻の推進にも努めます。なお、プライバシーの保護の重要性を認識し、個人情報保護の制度化に努めます。
 職員一人ひとりは、常に人権を尊重し、公共の福祉に奉仕するという意識を持ち、公正な判断、誠実な対応、明りょうな手順により、職務を遂行します。また、さまざまな人権問題への対応に当たっては、個々の問題の解決を図ることはいうに及ばず、あらゆる分野において、人問の尊厳と自由の実現を具体化する施策を実施することにより、豊かな人間関係で満たされた、人権侵害を許さない社会づくりに努めます。
(3)同和教育等の成果を踏まえた人権教育の推進
 本県においては、同和問題をはじめ、女性問題や外国人問題などの人権問題の解決に向けた各種の取り組みを進めてきました。同和教育は、同和問題の解決を図ることを目的に始められましたが、取り組みの経緯のなかで、あらゆる人権問題に関する理解・認識を深める役割も果たしてきました。また、同和問題啓発活動は、人権侵害を許さない雰囲気づくりや人権意識の高揚を図るうえで、大きな役割を果たしてきました。人権教育が根付いていくために、これらの取り組みを大切にしなければなりません。
 現在、世界各国において、さまざまな形での人権教育が展開されていますが、これらの人権教育の手法にも学びながら、さらに広く豊かな人権教育を展開することが求められています。
 今後の人権教育においては、これまでの人権意識の確立に向けた取り組みの経緯・成果を踏まえ、新たな手法も採り入れ、その推進に努めます。

5 行動計画の性格
(1)この行動計画は、「奈良県あらゆる差別の撤廃及び人権の尊重に関する条例」を踏まえるとともに、第49同国連総会で決議された「人権教育のための国連10年」の取り組みを本県において総合的に椎進するための計画です。
(2)この行動計画は、奈良県新総合計画と整合性を持つものであり、県のさまざまな施策に係る諸計画に対しては、人権教育の分野における基本となる計画です。
(3)この行動計画は、県が推進する人権教育の指針として具体的な施策の方向を明らかにしたものです。市町村をはじめ関係機関、民間団体、企業等においては、この行動計画の趣旨に沿った自主的な取り組みを期待します。

6 行動計画の日標年次
 この行動計画の目標年次は、「人権教育のための国連10年」の最終年に合わせ、2004年(平成16年)とします。

  7 行動計画策定の背景
(1)世界の動向
 二度にわたる世界大戦の反省から、人類は平和と人権の尊さを学びました。世界の平和を願って創設された国連は、1948年(昭和23年)に、すべての人々とすべての国が達成すべき人権の基準を定めた世界人権宣言を採択しました。
 その後国連は、世界人権宣言を実効あるものとするため、国際人権規約をはじめ、人種差別撤廃条約、女子差別撤廃条約、児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)などの多くの条約を採択するとともに、女性や障害者、識宇等の重要なテーマごとに「国際年」を設定し、人権が尊重される社会の実現に取り組んできました。
 しかし、世界各地では、民族・宗教紛争や飢餓・貧困、人種差別や女性差別など、生命と人権を脅かす問題が後を絶たず、これに対応するための人権教育の必要性から、1989年(平成元年)、個人やNGO(非政府組織)により「人権教育の10年組織委員会」が結成されました。1993年(平成5年)3月には、ユネスコが開催した「人権と民主主義のための教育に関する国際会議」において、「人権と民主主義のための教育に関する世界行動計画」が採択されています。また、同年6月、世界人権宣言採択45周年を契機に、これまでの人権活動の成果を検証し、現在直面している問題や今後進むべき方向を協議することを目的として、国連がウィーンで開催した「世界人権会議」では、「人権教育のための国連10年」の設定や国連人権高等弁務官の設置が提唱されるに至りました。
 このような経緯を経て、1994年(平成6年)12月の国連総会において、「人権教育のための国連10年」が決議され、世界各国において人権教育を積極的に推進するよう行動計画が示されました。
この国連行動計両では、
ア、人権と基本的自由の尊重の強化
イ、人格及び人格の尊厳に対する感覚の十分な発達
ウ、全ての国家、先住民、及び人種的、民族的、種族的、宗教的及び言語的集団の間の理解、寛容、ジェンダー(社会的・文化的につくられた性別)の平等並びに友好の促進
工、すべての人が自由な社会に効果的に参加できるようにすること
オ平和を維持するための国連の活動の促進
を目指すこととされています。
 また、この計画には人権教育の多様な側面として、人権について教えること、教育を受けることそのものが人権であること、人権が大切にされた状況や過程で教育が行われること、人権を守り育てる個人を育成し社会を創造すること、などが盛り込まれています。
(2)我が国の動向
 我が国は、国際社会の一員として、1955年(昭和30年)の婦人の参政権に関する条約をはしめ、国際人権規約や女子差別撤廃条約、児童の権利に関する条約、人種差別撤廃条約などの人権関係諸条約に加入してきました。
 また、日本国憲法がすべての国民に保障する基本的人権の確立と擁護を図るため、教青基本法、職業安定法、児童福祉法、健康保険法など数多くの法律や制度が整備され、行政機関が各分野において種々の施策を推進してきました。同和問題については、1965年(昭和40年)8月11目に同和対策審議会から「答申」が出され、それを受けて、国は1969年(昭和44年)に同和対策事業特別措置法を制定し、以来、法に基づく施策の推進を図ってきました。1996年(平成8年)5月に、地域改善対策協議会から出された「同和問題の早期解決に 向けた今後の方策の基本的な在り方について(意見具中)」(以下「地対協意見具申」という)では、「国際社会における我が国の果たすベき役割からすれば、まずは足元ともいうべき国内において、同和問題などのさまざまな人権問題を一日も早く解決するよう努力することは、国際的な責務である」と述べています。
 こうしたことを受けて、国では、1996年(平成8年)12月に人権擁護施策推進法を制定しました。人権尊重のための教育・啓発並びに人権侵害を受けた 被害者の救済に関する施策の椎進を、国の責務として規定するるとともに、その施策に関する基本的事項を調査審議する人権擁護推進審議会の設置をうたっています。この審議会は、1997年(平成9牛)5月に設置され、教育・啓発に関しては2年を、被害者の救済に関しては5年をめどに、答申が出されることになっています。
 また、「人権教育のための国連10年」の取り組みに関しては、1995年(平成7年)12月、内閣に推進本部が設置され、1997年(平成9年)7月には国内行動計画が公表されました。この計画では、人権教育を進めるに当たって、女性、子ども、高齢者、障害者、同和問題、アイヌの人々、外国人、HIV感染者等、刑を終えて出所した人などの重要課題に積極的に取り組むこととされ、主に、地方公共団体、民間団体等がそれぞれの分野においてさまざまな取り組みを展開するように、推進の具体的方向が提起されています。


「人権教育のための国連10年」奈良県行動計画 目次 へ [はじめに] 「2章」


夜間中学のトップ・ペ−ジ へ

奈良グロ−バル教育研究会 へ

なら おだんご ネット へ