ここは 「人権教育のための国連10年」奈良県行動計画 第5章
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1998年7月8日作成


「人権教育のための国連10年」奈良県行動計画
第5章 重要課題への対応


1 同和問題
(1)現状と課題
 同和問題は、1965年(昭和40年)の「同和対策審議会答申」に示されているように、日本国憲法によって、保障された基本的人権にかかわる課題です。
 本県の同和対策は、1948年(昭和23年)に環境改善事業補助を初めて実施し、「同和対策事業特別措置法」が制定された1969年(昭和44年)以降は国の制度も導入し、市町村をはじめ関係機関、民間団体等と共に積極的に推進してきました。同和教育については、これを教育行政の主要な柱と位置付け、就学保障、学力較差の是正、進路保障、人権尊重の精神の徹底を課題として、諸施策の充実を図ってきました。啓発活動では、県民の同和問題に対する正しい認識と理解を培い、差別をなくす意欲と実践力を高め、人権侵害を許さない雰囲気を醸成するため、積極的に取り組んできました。
 市町村においても、同和対策がすすめられるとともに、各首長を本部長とする同和問題啓発活動推進本部や各市町村同和教育推進協議会等が連携し、同和問題をはじめとするあらゆる人権問題を解決するための取り組みが推進されてきました。
 これらの取り組みにより、生活環境をはじめ同和地区の生活実態は大きく変化し、また、県民の差別意識も着実に解消へ向け進んできました。しかしながら、依然として、教育、就労、産業等における較差の是正、差別事象の発生等にみられる差別意識の解消、同和対策事業に対する「ねたみ」意識の克服などの課題が残されています。
 このようななか、1996年(平成8年)5月の地対協意見具申では、とりわけ差別意識の解消に向けた教育及び啓発活動の充実が提起されています。
 本県においても、これまでの経緯と成果を踏まえながら、同和問題の解決に向けた教育及び啓発活動の充実に努める必要があります。
(2)具体的施策の方向
ア、教育課題の克服
 同和地区生徒の高校・大学等への進学率はかなり向上したものの、依然として教育をめぐる較差が存在しています。この背景には、生徒・保護者の進路に対する意識、児童・生徒の学力などの問題が考えられます。
 これらの問題を解決するため、これまでの施策に検討を加えながら、学校・家庭・地域・の教育力の高揚、三者が一体となった就学前教育の充実、学力の向上を図る取り組みなどを進めます。また、隣保館や集会所、児童館等で行われている識字学級や子ども会活動など地域活動の充実に向け、必要な制度を引き続き実施するとともに、これらの事業を推進していくための指導者養成にも努めます。
イ、啓発活動の推進
 同和問題啓発活動を推進するなかで蓄積されてきた成果と手法への評価を行いつつ、世界の人権教育のさまざまな手法に学びながら、より効果的な啓発活動の推進に努めます。特に、参加者や対象者の学習・研修のレベルやニーズを考慮し、県民の自主的・主体的な学習意欲喚起するよう内容や手法に工夫を凝らします。
 また、これらの実施に当たっては、毎月11日の「人権を確かめあう日」の取り組みなど、市町村をはじめ関係機関、民間団体等との連携・協力をより一層密にしながら推進に努めます。
ウ、就労の安定
 若年層を中心に職域、職種の広まりなどの成果をみてきているものの、中高年層においては依然として不安定就労の傾向が現れています。就職の機会均等を保持し、就職を促進するため、雇用主に対する指導、啓発に努めます。
 また、差別のない明るい職場づくりを進めるため、公正採用選考人権啓発推進員(企業内同和問題研修推進員)の設置促進や、従業員への研修の充実が図られるよう、企業へ働きかけ、奈良県同和対策就職促進協議会と連携して実施していきます。
エ、隣保館事業の推進
 同和地区住民の生活の社会的、経済的、文化的改善向上を図り、同和問題の解決を図ってきた隣保館において、周辺地域を含めた地域社会全体のなかで、住民交流の拠点となる開かれたコミュニティーセンターとして、生活上の各種相談事業をはじめ、社会福祉等に関する総合的な活動や人権・同和問題について理解を深めるための事業が展開されるように支援します。

2 女性
(1)現状と課題
 日本国憲法の具現化や女子差別撤廃条約の批准等により、我が国においても、男女平等の実現に向けた各種の法律や制度の整備が図られてきました。
 しかしながら、人々の意識や行動、社会の慣習・慣行のなかには、いまだに女性に対する差別や偏見、男女の役割に対する固定的な役割分担意識が残っています。こうした社会の在り方は、女性があらゆる分野で自らの可能性を開花させることを困難にしているだけでなく、男性が自由な生き方を求めようとすることも阻んでいます。これは、女性の人権が侵されているということと、同時に、男性の人権の基盤も弱いものにしているということにつながります。
 こうした女性に対する差別や偏見、固定的な性別役割分担の考え方は、本県女性の就業率の低さにもつながり、「男らしさ、女らしさ」の考え方が子どもの育て方にも反映されていると考えられます。また、女性の過半数は何らかの社会・地域活動に参加し、割合としては男性を上回るのに、団体の長やリーダーシップを取っているのは圧倒的に男性で、女性はわずかとなっています。女性があらゆる場に参画し能力を発揮するためには、家庭や学校、企業などにおいて、ジェンダー(社会的・文化的につくられた性別)に基づく固定的な性別役割分担意識を払しょくし、男女平等・対等意識を広めることが大切です。
また、女性に対する暴力は、女性の人権及び基本的自由の享受を妨げ、侵害するものであり、あらゆる暴力を許さない社会の意識を醸成することが大切です。
 本県では、1997年(平成9年)2月、「なら女性プラン21」を策定し、女性の人権が尊重され、真の男女平等社会、すなわち「男女共同参画社会」が実現されることを目指しています。
(2)具体的施策の方向
ア、社会活動の活性化
 女性のエンパワーメント(政治・経済・社会・家庭などあらゆる分野で、学習・経験などを通じて力をつけること)の促進、女性の積極的な社会参加などを図るため、県女性センター等での学習機会の整備充実に努めるとともに、さまざまな学習活動・実践活動への支援に努めます。また、女性が被るさまざまな不利益についての相談体制の充実に努めます。
イ、意思決定の場への女性の参画
 県審議会等への女性の登用率が、2005年(平成17年)までに30%以上となるよう努めます。また、企業、民間団体に対しては、女性の方針決定の場への参画促進を図るため、広報・啓発活動の充実や女性人材育成にかかる情報収集・提供を進めます。
ウ、生涯学習における男女平等・対等の推進
 学校・社会教育において男女平等・対等意識を醸成するとともに、家庭教育においても、家族員の固定化された役割分担の見直しなど、互いの人権が尊重されるよう啓発につとめます。
エ、男女平等・対等を実現するための啓発
 女性に対する差別の解消、あらゆる分野における固定的な性別役割分担意識の払しょくとともに、「性の商品化」セクシュアル・ハラスメント(性的いやがらせ)、家庭内暴力などあらゆる形態の女性への暴力をなくすための啓発を進めます。また、雇用における男女の均等な機会と待遇の確保等のための啓発を進めます。
オ、女性の身体的特性の尊重
 学校、家庭、地域社会と連携した低年齢からの性教育の推進や、女性のリプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康・権利)を確立するための学習機会の提供と啓発、性的暴力をなくす取り組みなどを積極的に進め、性の尊重についての理解、認識についての浸透を図ります。
カ、国際社会の発展のための女性の連帯
 多様な文化や価値観を認め、グローバルな視点で行動できる女性の育成を図るため、国際理解教育、開発教育等の学習機会の提供に努めるとともに、女性問題をめぐる世界各国の取り組みの紹介など、情報の提供を進めます。

3 子ども
(1)現状と課題
 戦後、我が国は急速な経済発展を遂げるなかで、学歴重視の傾向が進み、夜遅くまで塾に通うなど子どもたちの教育環境も変化しました。子どもたちは、物質的な豊かさを享受する一方、生活体験や自然体験などが少なくなり、社会性の不足や自立の遅れなどが見受けられるようになり、健全な成長を保障されているとは言いがたい状況にあります。
 家庭においては、各家族化や少子化に伴う親の過保護や過干渉、あるいは放任、また、幼児虐待などの子どもに対する暴力のため、子どもたちは将来への夢や希望を持てず、それぞれの発達段階における課題を果たせないまま年齢を重ねる状況もみられます。このことが、子どもたちの自尊感情の醸成や自己実現に影響をもたらすとともに、子どもたち同士が互いの人格を認め、育ち合うことを困難にしています。
 そのうえに、有害図書(ビデオ)、テレクラ、援助交際という名の売買春行為など、性の商品化や覚せい剤等薬物乱用の問題が子どもたちの心身をむしばむといった憂慮すべき社会現象もみられます。
 学校においては、いじめや、不登校、体罰、 高等学校中途退学など、子どもの人権にかかわる教育上の問題も起きています。
 こうした問題を解決し、子どもの自尊感情と肯定的な自己概念をはぐくむ環境を整えるためには、学校、家庭、地域社会が互いに連携を図り、それぞれの教育力を高め、その力を十分に発揮しながら、児童生徒の人権の尊重及び保護に向けた取り組みを推進する必要があります。また、地域における人権問題の解決に主体的に取り組む意欲と実践力を育成することが必要です。
(2)具体的施策の方向
ア、「児童の権利条約」の理念・内容の周知とその具現化
 子どもの健全な成長発達を保障するためには、その基盤として、子どもを権利の主体者としてとらえることが重要であり、「児童の権利に関する条約」の理念・内容の周知徹底と具現化に努めます。
 学校においては、人権尊重、生命尊重の精神の育成に取り組み、児童生徒一人ひとりを大切にし、個性を生かす学校づくりを進めます。
イ、いじめ問題等への取り組み
 いじめ問題をはじめ不登校、体罰等の問題は、児童生徒の人権にかかわる重大な問題であるとの認識に立って、対策委員会の設置等の施策を講じるとともに、市町村教育委員会や学校においても、その予防や解決の取り組みを進めるよう指導します。
 また、児童生徒一人ひとりを多様な個性を持つ、かけがえのない存在として受け止め、、学校教育の枠にとどまらず、家庭や地域、関係機関・団体との連携を積極的に進め、社会全体が一体となって取り組むべき問題であるとの認識を深めるよう、啓発に努めます。
ウ、健全育成に向けての取り組み
 覚せい剤等薬物、テレクラ、援助交際という名の売買春行為、児童ポルノなど、子どもたちを取り巻く社会環境がますます悪化していることを踏まえ、家庭や地域、関係機関・団体との連携を図りながら、薬物乱用の防止や性の商品化の防止のための取り組みを進めます。
 また、社会性の不足や自立の遅れに対応するため、ボランティア活動などの地域社会への参加活動や自然との触れ合いの場を提供し、体験との出会いの中で、人権尊重の精神と社会の一員としての役割の自覚を促すとともに、視野の広いたくましい子どもの育成を目指します。
オ、就学前教育における子どもの人権尊重
 乳幼児期は、生涯にわたる人間形成の基礎を培う極めて大切な時期であることから、1987年(昭和62年)び示した「奈良県同和保育基本方針」の理念に基づき、家庭や地域と連携しながら、就学前の子ども一人ひとりの発達段階や個性に応じた保育を実施します。また、人権尊重の視点に立った保育を一層推進するため、保育・福祉関係者の研修の充実を図ります。
カ、要保護児童対策の充実
 児童虐待、養育放棄など、子どもの人権について早期に発見し、子ども及び保護者への指導・援助交際が迅速に行えるよう、相談体制を強化していきます。
 また、子どもの保護に当たっては、個別のケースに応じた適切な指導・援助ができるよう、職員の資質の向上に努めます。

4 高齢者
(1)現状と課題
 我が国では、21世紀には4人に1人が高齢者という超高齢社会になると見込まれており、本県の、全国に比べて高齢化率は低いものの、着実に高齢化へと進んでいます。そのため、本県では、国の新ゴールドプランに基づき、今後取り組むべき施策の基本的方向を設定して、高齢者が住み慣れた家庭や地域で生活を送ることができるよう努めています。
 しかし、高齢化の進展に伴って、寝たきりや痴ほう症の高齢者が急速に増えると見込まれ、また、介護に必要な期間の長期化、高齢化と家族との同居率の低下、介護する家族の高年齢化等、家庭の扶助機能が期待できにくくなるなかで、老後に関する最大の不安として、病気や介護の問題が顕在化しています。
 また、家族の介護負担が重過ぎると、身体的、精神的に余裕がなくなり、介護をめぐる家族間の不和が生じたり、介護が放棄されたり、高齢者の人格が軽視されたりすることが生じ得ます。また、近年、高齢者に対するいじめ、暴力、遺棄、財産奪取により高齢者の人権が著しく侵害されたり、高齢者の孤独死や自殺の増加といった深刻な社会問題も生じています。
 このような状況を防止し、高齢者とその家族を支援していくためには、住みよいまちづくりの推進、在宅福祉サービスの充実や住環境の整備、保険福祉施設の整備など、高齢者の人権に配慮した社会づくりに努めるとともに、地域全体で高齢者を支えていく仕組みが必要です。
 また、高齢者が健康で生きがいを持ち、安心して生涯を過ごすことができる社会を構築するため、高齢者の人間としての尊厳の確保、プライバシーの保護などに十分な配慮がなされなければなりません。そのためには、成人後見人制度の確立とともに、権利を擁護する期間の設置など、高齢者福祉の環境づくりが課題となっています。
(2)具体的施策の方向
ア、啓発活動の推進
 高齢者は、長年にわたり地域社会の発展にかかわってきた人々であり、尊敬の念を持って接することが大切であることや、高齢者の人格やプライバシーに十分配慮する必要があることについて、県民の意識の高揚に努めることが必要です。
 9月に設定している「敬老の日・高齢者保健福祉月間」におけるキャンペーンを中心に、さまざまな啓発事業を積極的に実施します。
 現在建設中の県営福祉パークの福祉体験館で、高齢者介護の実習等を通じて、地域住民及び中・高校生等への介護知識、介護技術の普及に努めるとともに、介護機器の展示・相談等を通じ、「高齢化社会は住民全体で支えるもの」という考え方を広く啓発します。
イ、生きがいづくり事業の充実
 介護等を必要としない元気な高齢者に対しては、活力ある長寿社会の実現に寄与するため設置した「(財)奈良県長寿社会推進センター」と連携を図り、高齢者の生きがいづくりや健康づくりの事業の充実に努めるとともに、「なら高齢者大学」「高齢者美術展」等の開催や、高齢者が参加できるボランティア活動の情報提供に努めます。
ウ、就労の機会の確保
 高齢者が長年にわたり培ってきた知識、経験等を活用し、65歳まで現役として働くことができる社会を実現するため、60歳定年の完全定着、継続雇用の推進、多様な形態による雇用・就業機会の確保のための啓発活動に取り組みます。
エ、高齢者の自立・社会参加の支援
 虐待その他高齢者に対する人権侵害の発生を防止し、また、介護や日常生活に関する相談が気軽に受けられるよう、県高齢者総合相談センターなどの相談窓口業務を充実します。 高齢者が地域で安全に生活できるよう、福祉のまちづくりを推進し、県民の意識の高揚に努めるとともに、高齢者を支援するボランティア活動を推進します。

5 障害者
(1)現状と課題
 県内の障害者は、年々増加する傾向にあり、重度化、重複化及び高齢化が進んでいます。また、障害や障害者に関する理解や認識の不足から、本人や家族が差別的な発言を受けるなど、人権を傷つけられたり、施設や制度の不備から障害者の活動が妨げられるなどの問題が起こっています。一方、障害者自身の自立意識や社会参加への意識が向上するとともに、生活の質の向上への意識も高まってきました。
 国では1993年(平成5年)12月に心身障害者対策基本法を障害者基本法に改正し、障害者の自立と社会、経済、文化等、あらゆる分野への参加を促進する取り組みが行われています。本県においても、障害者が、住み慣れた地域で自立し、積極的に活動できる社会を築いていくためには、ノーマライゼーションの理念を広く社会に定着させるとともに、「完全参加と平等」に向けた施策に取り組まなければなりません。
 子どもから社会人まで、すべての人々が、障害者への理解と助け合いの心を養い、行動できるように、県民それぞれのライフステージに応じた教育・啓発を進める必要があります。また、奈良県障害者福祉に関する新長期計画に基づき、社会的、経済的、環境的、文化的な基盤を整備する施策を展開する必要があります。
(2)具体的施策の方向
ア、啓発活動の推進
 障害者の社会参加を阻害している障壁の除去や障害者を取り巻く諸問題について、正しい理解を深めるため、「心身障害者福祉強調月間」「障害者の日」「精神保健福祉普及運動」等の機会におけるキャンペーン活動やマスメディアの活用など、啓発の充実を図ります。また、障害や障害者に対する理解の不足から生じる差別や偏見の解消に努めます。
イ、ふれあいの機会の拡大
 障害者と障害を持たない人がふれあえるスポーツ大会活動、文化活動、交流イベントとして「ふれあいの集い」「精神保健福祉大会」等の事業を開催するとともに、障害者が積極的に参加できるように支援します。これらの活動に関する情報の提供やボランティア活動への呼びかけにも努めます。
ウ、研修の充実
 教育に携わる教職員、障害者の日常生活を支援する保健・福祉関係職員、治療に携わる医療関係職員、障害者の就職問題にかかわる職業安定所の職員などに対し、人権に関する研修の充実に努めます。
 加えて、県民が地域においてそれぞれの立場でボランティア活動に参加し、その活動の輪が広がるよう、ボランティアの養成のための研修等を積極的に実施します。
エ、障害児教育の推進
 障害児の自立や社会参加を促進するため、早期教育や通級による指導など、障害の特性等に応じた多様で、きめ細かい教育を展開するとともに、保護者に対する就学等について相談体制の充実を図ります。
 また、障害及び障害者(児)問題に関する正しい理解を促進するための教育も推進します。特に、幼少時からの取り組みが重要であることから、保育所、幼稚園、小・中・高等学校において、障害児教育諸学校や障害児学級との計画的、継続的な交流教育を推進します。
オ、障害者の自立・社会参加の支援
 障害者が地域で安全に生活できるよう福祉のまちづくりを推進し、県民の意識の高揚に努めます。また、障害者が自立した生活を送ることができるように、障害者雇用促進月間を中心とした啓発活動や法定雇用率を達成するための指導、障害者雇用セミナーの開催などにより、事業主の理解を求め、雇用の場の確保を図ります。障害者の個性に配慮した的確な職業・就労相談や生活等に関する相談の体制整備にも努めます。

6 外国人
(1)現状と課題
 近年、諸外国との人的な交流もますます活発化しており、日本に在住する外国人が増加するとともに、滞在期間の長期化もみられるようになってきました。本県の在住する外国人登録者数は1万1千人弱で、その国籍は70数か国に及んでいます。その内の約60%は韓国・朝鮮人の人々が占めていますが、これらの人々の多くは歴史的な経緯によって、第2次世界大戦の終戦以前から生活している人々とその子孫です。
 戦後50年を経た現在も、在日韓国・朝鮮人に対する差別や偏見は根強く、民間住宅への入居拒否や就労に関する不利な取り扱いを受けるといった問題が生じています。また、国際化が急進するなかで、アジアや中南米等の国々から来日し県内で暮らす外国人と、地域においてかかわる機会が増えてきていますが、言語や習慣・文化の違い等により相互理解が十分でないことから、新たな摩擦や問題も起こっています。
 このような問題をなくすためには、在日韓国・朝鮮人をはじめ日本に居住する外国人について、その歴史を正しく認識し、多様な文化、習慣、価値観等を尊重し、国籍を越えてすべての人々の人権が保障される共生社会の実現に努めることが大切です。
(2)具体的な施策の方向
ア、「内なる国際化」の推進
 国籍や民族を問わずすべての人が、同じ人間として尊重し合い、異なった生活様式や考え方を理解し、違いを認め合って共生していく「内なる国際化」を進めるため、各種セミナーの開催などを行います。特に、近隣諸国と我が国との歴史等について、正しい理解と認識を深めるよう努めます。
イ、生活情報等の提供
 外国人は、県内で生活するに当たって、言語などが異なるため必要な生活情報を得にくいという点から、外国語表記による身近な生活情報の提供や生活相談窓口の充実を図るとともに、市町村等における通訳及び翻訳業務の支援を行います。また、公共施設での外国語表記についての検討を進めます。
ウ、厚生援護・住宅問題への取り組み
 現在の保健・福祉等の制度について、対象となる外国人が不利益とならないよう、制度の周知徹底を図ります。
 また、賃貸住宅等への入居については、単に外国人であるという理由のみで入居が断られたり、制限されたりすることのないよう、関係業界団体等への指導に努めます。
エ、教育・啓発活動の推進
 在日外国人教育、国際理解教育を推進するとともに、在日韓国・朝鮮人をはじめ、アジア諸国等の人々に対する差別や偏見を解消するため、正しい文化・歴史認識の醸成を図る教育・啓発活動の充実に努めます。また、在日外国人児童生徒が、進んで自国の文化や歴史等を正しく認識し、確かな自己概念や民族としての誇りを培えるような指導の充実を図るため、在日外国人(主として韓国・朝鮮人)児童生徒に関する指導についての研修会の実施などにより、教員の資質の向上に努めます。
オ、就労の機会均等の確保
 国内での生活基盤の確立のためには就労の機会均等の確保が重要です。そこで、就労可能な外国人について不当な取り扱いがなされることのないよう、事業主等に正しい理解を求め、就労の機会均等の確保に努めます。
カ、日本語教育の推進
 日本で居住し生活する外国人にとっては、日本語の習得が極めて重要であることから、学校における外国人児童生徒の教育の保障、主に、成人が学習している日本語教室等の充実を、市町村等と連携して進めます。また、現在、民間団体で行われている日本語教室への助成などの支援に努めます。

7 HIV感染者等
(1)現状と課題
 我が国の社会においては、今なお、さまざまな病気についての正しい知識と理解が十分に普及しているとはいえません。特に、エイズやハンセン病をはじめとした伝染病に対する医学的・科学的認識が不十分であり、伝染病り感染者及び家族に対する差別や偏見がみられます。
 病気に関する人権侵害をなくすため、正しい情報の提供など啓発に努めるとともに、り患者や家族が安心して生活できる社会を実現していく取り組みが必要です。
(2)具体的施策の方向
ア、伝染病り患者や感染者に対する差別や偏見をなくし、人間としての尊厳と自由を認め合い、共に生きる社会をつくるため、街頭啓発、パンフレットの作成配布、フォーラムや県立医科大学での公開講座の開催などにより、病気に関する正しい県民の理解を促進し、人権尊重の理解・認識の高揚に努めます。
イ、医療関係者の研修
 医師をはじめとする医療従事者に対し、伝染病り患者と家族のプライバシーの保護や人権を尊重するための研修会を実施します。
ウ、学校教育の充実
 病気に対する正しい理解と認識を深めるため、保健指導などの充実に努めるとともに、啓発教材の作成や指導者の人権意識の高揚を図るための研修の充実を図ります。
エ、自立・社会参加の支援
 伝染病り患者が自立した生活を送れるよう、関係機関と連携して事業主の理解を求め、職場の確保等に努めるとともに、プライバシーに配慮した治療体制の整備と適切な相談体制の充実に努めます。

  (注1)エイズ(後天性免疫不全症候群)は、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染し発症して起こる疾患です。

(注2)ハンセン病は、今日、治療法が確立しており、感染源対策としての患者の隔離を主体とした「らい予防法」は、1996年(平成8年)4月に廃止されています。

8 アイヌの人々

(1)現状と課題
 アイヌの人々は、北海道を中心に先住していた民族であり、独自の伝統を有し、アイヌ語や独自の風俗習慣をはじめとする固有の文化を発展させてきました。しかし、今日、十分な保存、伝承が図られているとは言いがたい状況にあります。
 このため、1997年(平成9年)7月に、アイヌの人々の民族としての誇りが尊重される社会の実現を図り、併せて、我が国の多様な文化の発展に寄与することを目的として、「アイヌ文化の振興及びアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発に関する法律」が施行されました。
(2)具体的施策の方向
ア、アイヌ文化の振興並びにアイヌの伝統等に関する知識の普及及び啓発
 さまざまな民族が共生し、多様な文化が存在することで豊かな社会が築かれるという認識のもと、国及び関係機関と連携し、アイヌの人々の誇りの源泉であるアイヌ文化の振興や、長い歴史の中で培われ、伝えられてきたアイヌの伝統に関する知識の普及及び啓発に努めます。
イ、教育活動の充実
 アイヌの人々の歴史や現状については、小学校段階から社会科の教科書等において取り上げられています。今後とも、人権尊重の観点に立った教育推進のために、教科指導等に関する教職員の研修の充実に努めます。

9 刑を終えて出所した人
 刑を終えて出所した人が、地域社会に復帰して社会生活を営むに当たっては、本人の強い意志と併せて、家庭、学校、職場、地域社会などの理解と協力が不可欠です。
 刑を終えて出所した人に対する差別や偏見をなくし、これらの人の社会復帰に資する啓発活動を進めます。また、自立した生活を送れるように、関係機関との連携を図り、相談支援に努めます。


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