集合の橿原神宮駅はもう冷たくはない春の雨にぬれ、明日の予報、曇り、降水確率午前10%、午後0%を信じる他ない出発をする。
どんより重い空は車を走らせても変わらず、新伯母峰トンネルを越えてもやっぱり雨。

トンネルを抜け和佐又ヒュッテへの道は所々うすく雪がついている程度で、しとしと雨のキャンプ場に今日のテントを張る。
雨音を肴にビールもまたいいか?
あとは鍋を囲んでゆっくり夕食をする。B G M
はなり止まず…。
雪になって欲しい雨はこの気温では雪にはならず、だんだん激しくなる雨と風に、眠りを妨げられることもしばしば。
一夜明けて、雨は止み、ヒュッテ前は真っ白いガスに包まれてしまう。
朝食のサンドイッチを食べ終えて、さてと、テントを出ると、なんと和佐又山上空は信じられないくらい真っ青の空!
風にガスがどんどん流されて青い空が広がっていく。
急にはしゃぐ4人?いや2人だったかも知れない。
予定より1時間遅れの出発は、和佐又経由で大普賢岳を目指す。雪は少ないけれど陰では氷になっていて滑る、注意。
天気は私達を待っていてくれたかのように回復し、和佐又山頂からは大峰の主稜線、弥山から釈迦のラインがゆったり広がり、丸い日本岳が間近に見え、その奥の大普賢岳はもうお目覚めかな?
和佐又山を一気に下り、和佐又のコルに出る。
緩い尾根はブナとヒメシャラの美林で、木々にとどまる水滴はイルミネーションのように輝き、あふれて落ちるしずくは光るシャワー!
昨夜の雨はこれを演出するために予定されたプログラムとしか思えない。
少し立ち止まってヒメシャラの赤い林、光るシャワー、透明なイルミネーションに見入る。
雨は雨で、雪は雪で、その情景に喜びを見出せる心でありたいといつも私は思う。
行場が次々にあり、指弾の窟、朝日の窟、最も大きい笙の窟で一息入れる。
不動明王の祠があり、水場も氷柱になり、そう言えば夏でも唯一涼しいところと記憶する。
大きな岩から降りしきるしずくが連なって、陽を受けて美しい。

鷲の窟を過ぎて雪は徐々に多くなり、道に氷のブロックがゴロンと転がっていたりする。
鎖場と滑りそうな斜面をゆっくり上がって日本岳コルに出る。
青空の下に雪の尾根が誘い、樹氷も見られ北斜面は雪いっぱいでうれしくなる。
雪の中で、もうシャクナゲが固いつぼみをつけて、健気に春を待っている。
きっと、大輪の花を咲かせてね!
実はシャクナゲに語りかける余裕など、あまりなく、連続するはしごと、凍りついた足場のない道に緊張しながら、石の鼻につく。

今日も胸のすくような、熱くなるような深い大峰に出会う。
この岩に休んで、大きな、大きな大峰に出会うと、身も心も浄化されて透明になれるような気がする。
時を忘れたい時、と思う。
展望を楽しんだ後はアイゼンをつけ、はしごをいくつかやり過ごし、小普賢の肩から大きく斜面を下る。
雪はピッケルが全部埋まる状態からして6〜70センチ程だろうか?崩れ落ちそうな足場に注意して鞍部に下りる。
まだまだ続く長いはしご、急斜面では「転落多し!注意」の表示が目に飛び込んで、細いけれどしっかりロープが張られ、その緩みの無さが一段と目に痛く感じられる。
一歩も落ちてはいけない斜面を慎重に足を運ぶ。下を見なければ、いつもの、ただの、一本の道とばかり…。

たった一人、昨夜山頂でテント泊の男性に会っただけでトレースも不明瞭な所もあり、時々テープ、ルートを探すために立ち止まり一息入れる。
傾斜が緩んで大峰奥駈道に合流し、左に折れてもう一がんばり、暖かい陽のさす山頂はガスがかかったり、一瞬晴れたりを繰り返し、2月とは思えない暖かさで、山名板に取り付けられた温度計は(南向いていた)10度を指していた。
今日も真っ白い雪に出会えて うれしい!
雪と遊べて うれしい!
待っていてくれたのね!大普賢岳

4人占めの山頂は暖色の陽だまりの中で昼食をとる。
雪上で、背中に春をたっぷり感じて…。
下りはヒュッテまでピストンし、途中の急斜面や氷の道、はしごの下りでは更に緊張しつつも、上りよりもかなり速い時間で下ってしまう。
笙の窟まで下りアイゼンを外す、足が軽い、軽い。
下り始めると、次第に重い雲に覆われ鉛色の空になってしまう。
思いが通じたのか?上りの4時間だけが青い空に恵まれるというこの不可思議。
本当に待っていてくれた大普賢岳に、もう、今期は最後になるかも知れない雪と樹氷に、ありがとう。
往ってしまう冬が少し淋しくて・・・ 合掌。
コースタイム
キャンプ場7:45→和佐又山8:20→笙の窟9:18→石の鼻9:55→大普賢岳11:25(昼食)11:55→小普賢の肩12:30→キャンプ場13:55
![]()