真 冬 の 上 高 地
H16年1月10〜12日
快適な暖かい車内から一気にマイナス気温の世界へ降り立つ。
暗い釜トンネルを歩く、そしてトンネルを抜けるとまさに雪国だった。

小さな滝は氷爆と化しそれを見たとたん行く手の寒さを感じてしまう。トンネルを抜けると白い雪。
焼岳が近く、大きく迎えてくれる。


見返り峠から真正面に胸のすくような明神岳、穂高を望む。登る訳では決してないのに何故かピリッと緊張する。
大正池は半分氷に閉ざされ寒々として動かず。

大正池から林間コースを取る。新雪にスノーシュー、そりのトレースが気ままに曲線を描き、雪面には樹々が長い影を光の中にくっきり落とす。木立を通して行く手には明神岳が青い冬空に映える。


夏には落ちるかと思われる程賑わう河童橋も、この時期ではさすがに人も少なく好みのロケーションでそれぞれのカメラを構える。
静かな河畔、焼岳、穂高、叶わないと分かっていてもこれがこのまま持って帰れるものなら…といつも思いつつファインダーを覗く。
真っ白な雪を踏みしめて、サラサラと指から落ちる砂のような雪に触れて、上高地の雪を満喫し明神館につく。


風を避けて明神館の横にテント設営し明神池を散策する。
澄み切った、切れそうに冷たい水に数羽のカモが丸くなっているように見える。
気温は低いけれど風も無く穏やかな夜を、シュラフにくるまって暖かく眠る。

一夜明けてまだ月の残る明神を後にする。名残惜しい宙ぶらりんの私の心を置き去りにして。


朝一番の光がまっすぐ穂高に届き、山頂の一角がオレンジ色に染まる。氷が朝陽に輝く一瞬。ゆっくり光が降りて来る。
空は透き通る青さで広がり、凍える穂高連峰がモルゲンロートに染まって行く。
感動がビンビンと音を立てて、私の胸に突き刺さる。


梓川に朝霧が立ち込め、河畔は白い霧氷、全てが白に閉ざされた世界になる。
川に沿って白い道が続き、白い森が続く。しんしんと冷気が顔をさす、頬が痛い、指先が痛い。
何度も何度も振り返る、くっきりと空に鋭角を描いて穂高がある。夏の穂高とは全く違う冷たく光る穂高がある。
言葉を失って歩を進める。
冬の上高地は凍りついて止まっている、何も聞こえない、切り取られた空間、切り取られた時間。
川の流れの他は時間さへも凍えている……