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   「瑞穂の国」・・・日本
    「ものづくり」の原点・・コメ作りを考える
      農業の活性化で「地方創生」をはかる・・・
        そして、奈良県東南部を元気にさせる
   
(1)農地法
  一般的に、農地は通常の宅地と比べて、土地は安く、広い敷地が確保
 できるので「景色の良い、広々とした農地」を買って、そこに家を建て
 「田舎暮らし」の、のんびりした生活をしたいな〜、と思っている人が多い
 かもしれません。
  ところが「農地法」という、罰則をともなう厳しい規制があります。
 「農地法」は、農業を営む人(耕作者)の地位を安定させ、国内の農業
 生産を増大させることによって、国民に対する食料の安定供給を確保する
 ことを目的に定められています。(それ以外にも、一般の人が、どこでも
 好きに家を建てるわけにはいきません。都市計画法などの法的規制
 があります。)
   ・農地を農地として購入(農地法第3条許可)
    各自治体にある農業委員会の許可書を得てから、所有権移転登記
    をする。農業資格があることが条件で、無許可で所有権の移転登記
    をすれば、3年以下の懲役または、300万円以下の罰金に処せられ
    ます。他に、農地法4条(転用)、5条(転用目的の権利移動)の規制
    があります。
     *農地転用許可書が貼付されてないと農地の所有権移転登記は
      法務局では受理されません。
(2)「高度の頭脳」と「莫大な資本」が必要・・
            生業(なりわい)としての農業
(脳業ともいえる)
   都市、その近郊に住んでいると、農業とりわけ稲作で最新の
  大型機械を自由自在に操っている、カッコよさ、そして、さぞかし儲かる
  のだなと、つい下種の勘繰りをしたくなるものです。
   (工房主だけかも?)
    多くの参考資料、農業経験者の話などから、おおよそ下記のように
   なっています。
   *収穫率とは、一粒播くと、一粒の米から何粒の米がとれるかという
    数値です。条件により大きく異なりますが、現在では約70粒です。
     多くの篤農家、研究者などのたゆまぬ努力で、江戸時代から
    較べると約3倍ぐらいになるそうです。
   *1年間に食べるお米の量は、一人当たり約60s(1俵)。
     必要な田んぼの広さは約40坪。10アール(1反、1,000u、
     約330坪、中学校のグランド面積の10分の1〜15分の1程度)
     あたり約530s程度、平均約8,8人分のお米が収穫される。
   *米価は歴史的な低水準にある。
    実質米価指数(1俵の米の販売代金の購買力:一般物価の上昇
    を考慮した指数)は、2010年を100とすると、昨年(2014年)は
    戦後最低の89.2にまで下がっている。最大値は1968年
    (昭和43年)の 244.3 である。実に3分の1になっている。
    工房主の記憶では、昭和50年頃、街の米屋さんで精米10s
    4500円前後程度だったように思います。現在、スーパーでは
    3500円前後程度、安売り時は3000円程度と、物価上昇を
    考慮すると、大変安くなっています。(ただし銘柄や収穫年度、
    販売時期などにもよる。)
   *3反(田3枚)ぐらいでは、大赤字
     10アール(1反、田1枚)あたり、480キロ(8俵)の米が収穫
     できると仮定すれば、奈良県のヒノヒカリ(銘柄名)の
     26年5月 15000円 *玄米60キロ
     27年5月 12000円 *相対取引価格 であるから
      8俵×12000円×3=288000円 わずか30万円弱
     これから肥料代、苗代、高価な農機具代(1番安いトラクター
     でも300万円)などを考えれば、大赤字で、何もしないで
     寝ているほうがマシだ、とぼやきたく状態です。
      やむを得ず耕作している自給的農家レベルでしょう。
     スケールメリットで、日本の平均耕作面積(1.7ha)の10倍
     ともなれば、話は別です。稲作は、生産技術が向上していて
     かつ、機械化がしやすいため、大規模な耕作が可能です。
      8俵×12.000×17アール(1.7ha)×10=1,632万円
     これは、あくまで理論的な売上高ですが、これなら必要経費を
     除いても、家族が生活できる可能性がでてきます。
       *一戸あたりの経営耕地面積 平成26年度では
        全国平均2.17ha、北海道23.35ha、都道府県の
         平均1.55ha(農林省統計による)
       ちなみに、アメリカ約178ha(日本の99倍)もあり
     ドイツ41ha、フランス45ha、オーストラリアでは3240ha
     (日本の、なんと1800倍)、これでは勝負にならないでしょう。
 (3)儲かる農業、特色ある農業への転換
     担い手の高齢化や後継者不足、生産性の低迷など、数多くの
    課題を抱えている日本の農業。TPP交渉の結果次第では、農業
    (とりわけ稲作)は壊滅状態になる可能性も大です。
     特色ある農産物の輸出拡大や農地の大規模化(大変困難で
    あるが・・・)、先端技術の活用(野菜工場など)、地域に密着した
    作物の販売で活路を見出さざるを得ないでしょう。

農業、林業の振興が、中山間地域を元気にさせるでしょう。

@売農地(成約御礼 A代掻き B育苗、いよいよ
橿原市城殿町 田植えの準備 コメ作り開始

C小型田植え機 D水管理 E肥料(追い肥)
手では無理 生育調査など 生育管理

F平成26年10月 G近郊農家でも H小形コンバイン(左)
機械化が進展 農業機械が必須 右は、天日乾し

I刈り取りの稲 J中山間地域 K石川県輪島の
天日干し(中央) 耕作放棄地(手前) 有名な「千枚田」

L二上山麓 M稲穂 N稲穂
日本の原風景 もうすぐ収穫 やっと収穫

O精米機、都会 P精米機の内部 Q(左)白米、右は
では見かけない 10キロが100円 玄米、保存がきく。
(4)お米
  写真Oの精米機は、大阪ではほとんど見かけません。奈良では、
 道路沿い、ホームセンターなど、いたるところに設置されています。
  県内の農家より直接わけてもらった玄米(ヒノヒカリ)を精米して、
 ご飯をいただくと、「お米」って、こんなに旨いのかと、スーパーなどで
 購入したお米(精米済み)とは歴然とした差を感じます。
  *コメは、精米すると劣化しやすい。
(5)農業振興への方策
  奈良県の農業振興政策(農業地域振興制度など)
  参照:奈良県ホームページ
  農林省の中山間地域等直接支払制度など中山間地域の農業振興
  手助けがされています。
  参照:農林省ホームページ
(6)農地(田、畑)の多面的機能
   田や畑には @洪水防止 A河川流況安定 B地下水涵養
  C土壌浸食(流出)防止 D土砂崩壊防止 E有機性廃棄物
   分解 F気候緩和 G保健休養・やすらぎ のような機能
   があり たとえば@の機能だけでも貨幣評価をすれば、3兆円
   は下らないとの試算があるくらい大きな役割を果たしている。
(7)農業政策の変遷
  @江戸時代後期〜大正時代初期
   「均衡」農業と工業が発展が均衡し、コメの需給は安定
  A大正中期
   「米不足」人口の増加と工業への労働力集中で、コメの自給率
        が低下→米価上昇→米騒動(1918年)
  B戦後
   (a)増産期 食糧管理法、干拓事業の推進、農業基本法
     1963年頃からコメが供給過剰状態になる。
   (b)減反政策 1970年より減反政策開始
   (c)1993年、ウルグアイランド、コメの一部自由化
     1995年、食管法廃止、食糧法施行
         米の流通の自由化、スーパーマーケットでの販売が
         可能、街のコメ屋さんの苦悩(どうしても大手に負ける)
   (d)1999年、コメ輸入の関税化が始まる。農業基本法の代わりに
          食料・農業・農村基本法成立→農政が大きく変化する
          農家保護から食料の安定供給と多面的機能重視へ
      *ミニマムアクセス米として、国内消費量の約7.2%
       (毎年約77万玄米トン)の輸入義務を負っており
        国内的にはコメ余りのため、農政的に苦慮している。
        TPP交渉では、さらに特別枠として、7万トン前後
        追加される可能性がある。(2015、8、15現在)
(8)食料自給率 5年連続39%
   農林水産省は、H27年8月7日に、2014年度の食料自給率
  (カロリーベース)が5年連続39%だったと発表しています。
  「食料の安定供給を確保することは、国家の最も基本的な
  責務だ」とし、平成25年度までに、45%に引き上げる計画を
  しています。
(9)農業が抱える課題
   消費者から見れば、おいしくて、安全で、安ければ安いほど良い、
  このことは当然のことでしょう。ただ、1993年(平成5年)夏の冷害と
  台風の相次ぐ襲来で大凶作となり、平成の「米騒動」が起こったことが
  記憶に新しいところです。20年も経つと、「そんなことあったけ」
  になっています。食料は、「武器にも勝る」との格言もあります。
   目先の市場原理だけだと、日本のコメ作りは壊滅する可能性も
  あり、営々と築かれた田圃は、容易にもとに戻らないでしょう。
   政治的な難題が、国内だけでなく、国際的にも山積している農業
  政策ですが、なんとか、うまくソフトランディングしてもらいたい
  ものです。
    *土地所有、税制、補助金、規制緩和など、農政は複雑怪奇で
      あらゆる面からも多面的に考えなければならないこと、
      いうまでもありません。
 (10)今こそ「農業」から「脳業」へ
   TPP交渉が大筋合意したと報道されています。(27年10月6日)
  TPPを単にマイナス材料とみなさず、むしろ未来の農業を形成
  する好機ととらえる時期なのかもしれません。
   政治的には、規制緩和で企業参入が相次ぐ(農業生産法人)
  や農地法の見直し(農業委員会の在り方)など、また、ITを駆使
  した「攻めの農業」が相次いでいることがあげられます。
   *一例として、亀岡市で、民間企業が、「植物工場:プラント」
    で毎日2万株以上のレタスを出荷するなど、急激に進歩
    しています。
 (11)TPP(環太平洋経済連携協定)、FTA,EPA
   2016年に米国を含む12か国で正式合意したが、トランプ
   米政権が、2017年1月に離脱を各国に通知し、発効が
   見通せなくなっている。このため、日本やカナダなど残った
   11か国が早期に発効させる方策が検討されている。
    (2018年1月11日現在)
   *トランプ大統領の言動に世界中が翻弄されている。
    トンデモナイ大統領だ、との声もあるが、自国が第一、
    そして自国民の雇用も第一だ、米国民からすれば全くの
    正論です。
    TPPではなく、FTA(自由貿易協定)、EPA(経済連携協定)
    などをめざし、2国間、多国間での駆け引きがされていて、
    目が離せない状況になっています。(2018年10月21日現在) 
   *自由貿易の大きな枠組みが動き出しており、農産品市場の
     開放をチャンスに変える「攻めの農業」の時代が来ていると
     見るべきなのかもしれません。
 (12)進化する食物工場
    日本のお家芸の技術「発光ダイオード:LED」を応用して、
   安全で清潔な野菜を生産する技術の開発が、大学、企業など
   で急速に進められ、実践されています。レタスであれば
   光合成を進める赤色の光で「にがみ」が減る、青色の光で
   抗酸化成分が増す、など多彩な野菜づくりが可能です。
    狭い国土のハンディを乗り越える技術開発が急がれます。

  参考図書、資料など
   @農業の基本  堀江 武 監修 誠文堂新光社
   A知識ゼロからの 現代農業入門 八木宏典 家の光協会
   B知識ゼロからの コメ入門  八木 宏典 家の光協会
   Cコメの歴史  レニー・マートン(龍 和子訳) 原書房
   D最新農業と農的暮らしがよ〜くわかる本 筑紫 君枝
                       秀和システム
   E貿易 新ルール入門  中田 一良 あさ出版
   F農林省、奈良県ホームページ
   G日本経済新聞、読売新聞などの新聞掲載記事
   Hインターネット掲載記事   その他多数
      
   ログハウス
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