安全衛生製品事業部技術部

使い捨て式防じんマスクの使用限度時間

労働省(現在の厚生労働省)は、平成12年9月11日付け労働省告示第88号で、防じんマス

クの規格(昭和63年労働省告示19号)及び防毒マスクの規格(平成2年労働省告示第68号)

の一部を改正しました。この規格の改正により、従来の石英粉じんによる粉じん捕集効率試験が削

除され、新たに食塩エアロゾル及びフタル酸ジオクチル粒子の粒子捕集効率試験が導入されました。

この試験変更にともない、従来の石英粉じんを堆積させて求めていた使い捨て式防じんマスクの使

用限度時間を食塩エアロゾルの堆積による使用限度時間の算出に変更しました。下記に使用限度時

間の概要と算出方法について示します。

1.使用限度時間

労働省は『使用限度時間』を「使い捨て式防じんマスクの機能を損なうことなく使用できる時間

をいう」と定義しています。そして検定合格の使い捨て式防じんマスクにはこの使用限度時間を表

示することが義務づけられています。

 使用限度時間とは

  a)粒子捕集効率が規格値を下回ることがなく

  b)吸気抵抗に著しい上昇がない

 以上のような状態にあり、機能を損なうことなく使用できる時間をいいます。

2.使用限度時間の決定方法

3Mでは、使い捨て式防じんマスクの使用限度時間を以下の条件で算出しております。一例とし

て、No.8210-DS2 の算出方法を示します。

毎分0.1mg の食塩エアロゾルを防じんマスクに供給したとき、吸気抵抗値が規格値の

1.5 倍(DS3 及びDL3 クラスの防じんマスクの場合は1.3 倍)に達するまでの時間。

 食塩エアロゾルを濃度18.9mg/m3、流量毎分85リットルにて使い捨て式防じんマスクNo.8210-DS2

に供給したとき、吸気抵抗が105Pa(毎分40 リットル)相当時の粒子捕集量を求め、毎分0.1mg を供

給したときとして概算した。

 No.8210-DS2 80.2mg の食塩エアロゾルが捕集されたときに、吸気抵抗が105Pa(毎分40 リット

)となる。したがって、

   80.2mg)=0.1mg/min×t(min

   t(min 80.2mg÷0.1mg/min

        =802min)=13.4h

       t:使用限度時間

以上より、No.8210-DS2 の使用限度時間は13時間と決定した。

         表 3M 使い捨て式防じんマスクの使用限度時間

マスク名検定合格番号使用限度時間

No.8210-DS2 第 M29 号13時間

No.8511-DS2 第 M28 号27時間

No.9322-DS2 第 M31 号18時間

3.使用限度時間と廃棄時期

次のいずれかに該当する場合には、マスクを廃棄して新しいマスクに交換してください。

@ マスクが型くずれを起こしたとき、不衛生な状態になったとき、マスクが損傷したとき、装

着していて異常を感じたり、息苦しくなったとき

A 砒素、クロムなど有害性の高い粉じんを使用したときは、一シフトの使用ごと

B 環境中の粒子濃度から判断する場合は、次の方法を参考にしてください。

   B−1 作業環境中の粒子状物質の濃度が、3mg/m3以下の環境では、マスクに表示

されている使用限度時間に達したとき

   B−2 作業環境中の粒子状物質の濃度が、3mg/m3を超える環境では、

作業環境濃度(

マスクに表示されている使用限度時間3(

使用限度時間

3

3

mg/m

´ mg/m

=

以上