積年
中井龍彦
火を見つめ過ごせしひと日積年の村の暦をまたひとつ繰る
夏支度
川流れどこに行きしと問ふ歌を妻口づさむ君はどこ行く
子らの声絶へて久しき村里にじゃんけんぽんの鬼さへも来ず
われと娘と陽に照る山を眺めゐるさびし昔の古里ならば
サッカーの勝敗知らず赤茄子の熟るるを待てるカラスとわれと
洗はれて海辺の岸に横たはる流木はるか山を見つむる
獣らと人とのさかひ南瓜の柵の中にて膨らむ地雷
ちひさなる村にも変はり神住みて屁をひりし神洟垂れし神
白々と枯れたる松の山なれば木霊を返す神すらも見ず
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