中井龍彦
杉木苗植ゑて降り来る
やはらかに緑はぐくめ父ははの守りにし里に朴の花咲く
窓際に
木々がみな風にそよぐ日 空あをく慎みふかく今日を生きなん
日常を嘆きでてあれば山よりぞ蒼き
幾たりの死者に出会ひし春過ぎ夏過ぎまた秋を過ぎにき
こぶし花咲ける春をかなしめば遠山並みを父過ぐるらし
崩されゆく山を日ごとに見て通る痛みもやがてさむざむとせり
野に山に言葉すがれてゆきし
一人去り二人去りしてわが里にゲゲゲの鬼太郎住みてくれぬか
秋空に黒き
けふは雨 木々の緑に濡れそぼつ産土神を憎しと思へり
寒空に黒き鳥影移る日に病みし獣のごとく山ゆく
戻る