住宅の耐久性と寿命

                                                中井龍彦        

 住宅を購入する場合、「住み心地の良さ」と「価格」を優先するのが大方の消費者心理である。構造に不備があるかどうかは、建物を見た限りではわかりえないし、地震に対する「安全性」を最も重視して購入したと言う消費者も少数派であろう。このたびのマンション強度偽装問題は、住宅の「安全性」と「耐久性」を偽造した事件であり、「価格」と「住み良さ」にばかり目を奪われがちな消費者心理の陥穽であった。

 一方で,住宅寿命を加算して購入する消費者も数少ない。

日本の住宅の寿命は30年、3千万の物件だと一年で100万、利子を計算に入れずに月々8万3千円の賃貸住宅に住んでいるのと同じことである。三十年ローンを払い終えた時点で、解体、立替期を迎えてしまう。ちなみに、よその国の住宅寿命を見てみると、イギリス141年、フランス86年、アメリカ96年と、日本の三倍から四倍も永い。木の文化を自称する日本の住宅が、これほど短命であることに改めて驚かされる。当然のことながら、短命住宅は老朽化が進むにつれ、著しく安全性を損なってゆく。

 安くて住み良い住宅を持ちたいと願う気持ちは誰しも同じだが、安い家にはそれなりのわけがあり、寿命も短く、リスクを伴うということを承知しておかねばならないであろう。木造住宅の場合、施工者は往々にして、より安い柱、梁などの構造材を選び、また材木店に値引きを強いたりもする。ここのところで、住宅の寿命が短くなっても不思議ではない。

 たとえば、住宅に耐用年数があるのと同様に、柱一本にも寿命があり、使用する箇所や樹種によってその寿命は大きく違ってくる。したがって、日本のような風土においては、腐朽菌やシロアリに強い木材を使うことが住宅寿命を延ばすための要件であり、木造住宅の耐久性や強度は、構造材を何本使うかというような専門的なマニュアルとともに、どの部材にどのような木材を使うかという事が、重要なポイントとなる。

 マンション、ホテルのみならず戸建て木造住宅も苛烈な価格競争にさらされ、特に壁下の管柱や床下の眼に見えない部材に、きわめて安い北欧産のホワイトウッドという集成構造材が国産ヒノキを押しのけて登場した。わずか10年内のことである。

 安くて強く、品質がよければそれでいいではないか、というのが消費者の意向だが、30年たってもその品質は保持されるのか、となるとハウスメーカーも口をつぐんでしまう。それは、このホワイトウッドの腐りやすさをよく知っているからであり、ヨーロッパでは百年の寿命が保てても、日本では短命であることを、宣伝上手なメーカー側は伝えようとしない。しかも、木造住宅の7割から8割にこのホワイトウッド集成柱が使われ、国内林業ならびに国産材は、すっかり供給力と気力をなくしてしまっている。

 「安さ」だけを追求すると、結局「不完全なもの」「短命なもの」が出来上がってしまう。これからの住宅に求められるのは、安全性はもとより、寿命を加算した「見えない部分の付加価値」を、もっと重視する必要があろうかと思う。


                                       2006年3月