目と目が合ったあの日から恋する乙女に火がついた。

不二 周、14歳――― 
狙うは青学屈指の男、手塚国光オンリーワン!


LOVE ATTACK1


深く険しい皺が額に吸い込まれるかのように入り込んでいく。
靴箱の前でしばし冷ややかに何やら見つめていたがくしゃりと丸められ見事にゴミ箱へホールインワンした。
皺皺に歪んでゴミに紛れてしまったそれは男子なら泣いて欲しがる青学切ってのアイドルの生写真。

「くっそ〜〜〜〜。写真攻撃もダメか。ばっちり選りすぐったはずなんだけどなー」
ゴミ場から拾い上げ一枚ずつ広げて誇りをふっーっと一吹きする。

「まあ、これで落ちるとは思ってなかったけど。やっぱ正々堂々真正面から攻めてやる!」

意を強め気合を入れまくりの不二であるが、この行動今に始まったことではない。

出会いは2年前の入学式―――
桜の木の下から見ていたテニスコート・・・。


空へ向かって振り放った黄色い球、バシッと音を立ててネットの向こう側へ突き刺さる。

「すご・・・」

桜の花がはらりはらりと散り行く中、不二はフェンスに指を引っ掛けて噛り付いて見入っていた。
再び球が振り上げられたと同時に、

ガシャンッ――

「うゎっ・・」
あまりの瞬時の出来事に尻餅をついて倒れてしまう。
フェンスの網目の中に黄色い球がごっぽりとはまり込んでいた。


ザッ、ザッと砂を蹴る音が近づき、頭上から掛けられた声。

「大丈夫か?」
「う、・・うん」

声の主に不二は硬直する。
それはさっきから見事なサーブを何度も放っていたその人だった。

だ、大丈夫じゃないかも・・・
差し出された手に伸ばした不二のそれが微かに震えていた。

「怪我したのか?」
「たぶん・・」
「たぶん?」
「いや、してない、どこも平気!ぴんぴんしてる!!」
「・・・そうか、なら良かった・・」

そう。身体は平気。痛くも痒くもございません!

だけど―――僕のハートはたぶん重症。
だってズキュンと音を立てて打ち抜かれたんだから。

この日から不二の手塚獲得作戦が始まったのである。


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