ロムちゃん誕生秘話(かっこう版)

想定1

屋代修一は単なるコンピューター技術者ではなく、心理学や脳生理学でも最先端を行く情報処理技術関係の天才であった。

想定2

屋代修一は、実は「夢守」の血を引いていた。あるいは似たような力を持っていた。

想定3

屋代修一は、夢守の力を媒体にコンピューター上に自分の意識を移植する研究に没頭していた。目的はもちろん、自ら生み出した究極の理想少女ロムちゃんと直接あんな事やこんな事が出来るようにするためである。

想定4

屋代修一は、想定3をほぼ実現しつつあったが、ロムちゃんのプログラムをミスったため、自ら「グリフィン」に取り込まれ、他人の精神にアクセスするためのデバイスになってしまった。

 想定1の必要性は前段にも触れたように、ロムちゃんを生み出すためには必須の能力と思われますので説明を省きます。
 それよりも重要なのは想定2です。
 実際のところ、人間の精神にアクセスする機械など、どう考えても現今の技術の延長線上に出来るとは思えません。でも、人間には「夢守」というそれを可能にする者がいます。「フロイト城」で人造人間ジュリアンの夢に入った麗夢が、コンピューターみたいだ、と言ってましたが、それならコンピューターその物にだって入り込めるとしたらどうでしょう。屋代博士のプログラミング能力は到底天才の一言で片付けられるようなレベルではありません(何せ一人でロムちゃんをプログラムしてしまうのですから)が、屋代博士がキーボードやディスプレイを介すことなく、多少でも直接コンピューターとコミュニケートできる能力を持っていたならそんな超天才的能力も頷けるのではないでしょうか。
 そして想定3、屋代博士の目的です。あれほど心血を注いで誕生させた理想の女神が、実はコンピューター上にしか存在できず、ディスプレイでしか見ることが出来ないというのは、屋代博士にすればあまりにも歯がゆい、不満といらだちを覚えるのではないでしょうか。
 ジュリアンを生んだヴィクターのような能力があれば「人造人間ロムちゃん」を作る事もできるでしょうが、屋代博士にはそっち方面の素養は残念ながらありません。でもどうしても手を繋ぎたい、抱きしめてみたい、と屋代博士は切に願ったに相違ありません。
 それにはどうすればいいか。自らの精神活動を、コンピューター上に移植するのが、博士の専門分野からすれば妥当な結論になるでしょう。脳の専門家にとって、五感も情動も全て脳の中で走り回る電流と化学反応の総体に過ぎません。しかも想定2の通り、不完全ながら屋代博士にはコンピューターその物に直接アクセスする夢守の力があります。それをより完璧にして意識の全てをコンピューターに移植し、その意識がコンピューター上でロムちゃんを実感できれば、たとえ肉体は無くてもロムちゃんを抱きしめる事が出来るわけです。
 しかし、その実現は屋代博士と人類にとって危険すぎる諸刃の剣でした。きっと念願のロムちゃんとの対面で屋代博士は舞い上がってしまい、その危険性が見えなかったのでしょう。そして、気が付いたときには時既に遅し。想定4のごとく、屋代博士はその能力を解析され、利用されることになってしまったのでした。
 ひょっとすると屋代博士は肉体(大脳)ごとグリフィンに取り込まれてしまったのかも知れません。不審な死を遂げた、とされる屋代博士の死の不審性は作品では何の説明もありませんが、その死がそういうことなら、なるほど警察の手に負えるような死に様ではないでしょう。
 第一グリフォンほどのスーパーコンピューターなら、麗夢がやったみたいにシステム一つをダウンさせたくらいで完全停止するはずがありません。東京都だって、そんなフェイルセーフのカケラもないシステムに、大切なライフラインをゆだねたりしないでしょう。
 でもロムちゃんの能力の大部分が屋代博士の脳機能に依存するとすれば、そして麗夢が破壊したCPUが実は屋代博士の脳その物だったとしたなら、バックアップも効かず、ロムちゃんがダウンしてしまったのも納得です(納得して下さい(笑))。

 以上、相変わらずの「たわごと」ですが、いつも通りのかっこうの病癖として勘弁下さい。そしてもちろん、これは楽しさ一杯のCDドラマ本編や、制作下さった関係者の方々には一切関係ない独り言であり、内容の不備、誤謬などの責は全てかっこう一人にかかるものであることを、明記しておきます。


ROMちゃん

目次に戻る