2003.2.4(火)

香港3日目の朝食は、機内で食べられなかったロールパンと昨晩買っておいた牛乳とカップに一杯、それとシャウケイワンの市場で買った香蕉(バナナ)だった。昨日の朝のように朝飯前に歩くのを(龍哥が)避けたかったからだ。龍哥は何故か日本から持ってきていたカゴメのトマトジュースを飲んでいた。そんなの我が家の朝食と一緒じゃん。。。

今日が旅行の中日(なかび)なので、後の日程も考えて朝のうちにお土産をゲットしにいく事に話が決まった。チョコレートとかそんなのでお茶を濁したくないよねと言いながら、春節の香港らしいものをと街に出かけた。

海防道にキッチュなお店を見つける。
この店のお姉さんは北京語が話せたので、「これらは、春節の時期だけ売っているのか」と聞いてみた。期待に反して、この時期だけじゃなくいつでも買えるものらしいことが判ったが、なんとなくお正月っぽかったので買うことに決めた。(笑
小さいランタンの飾り、萬事如意・学業進歩・恭喜發財などが書かれた吉祥飾り、可愛い赤い靴の吉祥飾りなど、それぞれ結構沢山買った。それから、火を着けると立体的なおねえさんのバストが光る仕掛けのライターは、別に春節には関係無かったけど、龍哥のお友達へのお土産に決めた。全部で〆て$333だった。

その隣のお店では、龍哥が娘へのお土産にと$80のジャケットを買っていた。愛する娘へのプレゼントが1300円弱とは・・・とほほ。

なるべく荷物を軽量にしようとして、履いたきりの革靴1足しかなかった龍哥。山歩きはお手のものなのだが街歩きはどうも慣れていなくて、その靴ではこの先辛いと感じたらしい。ところが・・・
「香港の靴屋はなんで、一種類のメーカーしか置いてないんや!!その上、値段は高いし・・・。昨日、一人で街に出たときに靴屋を覗いたんやけどな・・・。」といぶかっているのだ。そんな筈はない。香港は世界のあらゆる物が集まって来ている筈なのに。。。
ホテルのすぐ近くのスニーカー屋だというので、確かめに行ったらなんとお店の入り口に大きく『Reebok』と書かれている。ブランドには全く関心の無い龍哥に説明するのに、結構時間がかかったのは皆さんにも予想がつくだろうか。

とにかく、龍哥の気にいる靴を探しに行こうと、海港城へ向かった。靴屋さんではセールをしていて5割引の品物があった。サイズもちょうどのがあって購入したのだが値段は$345。今まで買い物した何よりも高い。このあとの旅行中は、ずっとこの靴にお世話になったけれど、龍哥自身の香港土産として、今も我が家の下駄箱の中で眠ったままだ。(5000円以上ものスニーカーは、彼の考える『運動靴価格』をはるかに超えているらしい。。。)

買い物も終了し、お昼ご飯は「台湾鶏家荘/台湾牛肉麺」に行った。店は台湾からの観光客らしい人々でほぼ満席だったが、二人だったのですぐ席が見つかった(なんで台湾から来てわざわざココなんだろ?)。やっとお粥を食べられるお店に入ったしせっかくだからと、一度食べてみたかった鮑の入ったお粥(鮑魚帯子粥)を頼んでみた。龍哥は普通に鶏肉のお粥(招牌鶏粥)だった。鶏のは早くに運ばれてきたが、私の鮑は龍哥がすっかり食べ終わって随分してからやっと出てきた。贅沢しようとするから、こんな目にあうのだろうか。期待したわりには普通の味だったような気がする。私の方が3倍も高いお粥だったのになぁ・・・。

今日は、これから夕方までは別行動しようという約束だった。龍哥はまずお昼寝してから、私は部屋に戻ったらすぐに自由行動に出かけた。

私はまず、かつてLeslieの生写(なまじゃ)などを買った『信和中心(シノセンター)』 へ行ってみた。地下鉄の旺角(モンコック)と油麻地(ヤウマティ)のちょうど真ん中くらいにあるビルだ。掘り出し物があるかと期待をしていったのだ・・・ところが、どこの階を探しても香港明星関係のグッズは殆ど無く、結局何も買わずにがっかりしてビルを出た。

ビルを出た所に、以前も寄った『唯王(ワイウォン)食品』という乾物屋さんを見つけ、美味しい話梅(ふぁーめい)をいっぱい買った。 

その後はまた尖沙咀へ戻り、今度はずっと開くのを待っていた『糖朝(スイート・ダイナスティ)』へ行ってみた。三日間の正月休みがあけて、やっと念願が叶った。以前、共にLeslieのコンサートに来ていた友人と夕食を食べに来た事があったが、その雰囲気が好きになったので、また来たいと考えていたお店だった。龍哥は甘いものが苦手なので、今回は半ば諦めていたのだが、お互いに自由行動をする事になって実現したのだった。

前回と同じように店内はほぼ満席だったが、大きな丸テーブルに席を取ってくれた。いわゆる相席なのだが、それが香港らしくてとてもいい。私の右隣には、北京語を話す女性とその子供らしき人たちが4人座っていた。広東語に苦労していたので、話が通じそうな彼女らに親しみを感じ、声を掛けてみた。

(注 LはLOPO Tは台湾人の人)
L 「あなたたちは何処から来たの?」
T 「台湾です。台北。」
L 「いつ来たの?」
T 「2日に来ました。」
L 「私も2日に来たんだけど、花火は見ましたか?」
T 「私達は午後7時ごろに着いたので間に合わなかった。」
L 「すっごく綺麗だったよ。大きい花火がいっぱいっぱいで・・・。」
T 「貴女はここ(香港)に住んでるの?」
L 「いいえ、旅行者です。夫と二人で来たけど、彼は今ホテルで寝てるの よ。」
T 「どこから来たの?」
L 「日本です。」
T 「へぇ。日本人なの!なんで中国語そんなに話せるの?大学で習ったの?」
L 「いいえ、市民サークルで学習しただけです。」
(T 「この人日本人なんだって・・・。」と子ども達に小声で)
T 「私達、何度も日本に行った事あるんですよ。京都・東京…北海道…。」
L 「北海道はいつ行ったの?冬?」
T 「いえ、夏に行きました。」
L 「北海道は冬も雪が綺麗でいいですよ!冬にもいって御覧なさい。」
              (中略)
T 「私は奈良に住んでいます。機会があったら、また日本に来て奈良にも来て下さいね。それじゃ私は行きますね・・・再見!」
カタコトの北京語だったけど、知らない街で外国の人と小さな交流が出来たことにとても満足したのだった。

そうそう。私が糖朝で食べたデザートは豆腐花(とうふふぁー)。ここのお店の名物で木樽に入ったのが本物らしいけど、一人では食べ切れない(多分 5~6人前?)なので、普通の食器に一人分入ったのを注文した。今度大勢で行けることがあったら是非本物を食べてみたいものだ。

さて・・・私が自由行動をしていた頃、龍哥も当然一人で街を散策している筈。これからは、彼の一人歩きのエピソード聞き書き編。

********************************************************************************************** 
昨日街角でもらったというチラシを頼りに、「足裏マッサージ」に行くのだとテンションを高くしていた龍哥。宣言どおりその店に向かった。そこは、ホテルを出て重慶大厦(チョンキン・マンション)とは反対方向に少し歩いて道を渡ったビルの3階だったか4階だったか。お店のドアを開けたら、そこには20畳ほどのフロントらしきものがあり、男が一人暇そうにソファーに寝そべっていた。

声を掛けたらびっくりしたように飛び起きて、広東語でまくしたてられた。全く中国語が分からないこちらも、その勢いに面食らってしまった。分からない言葉で色々と話してくるのだが、適当に受け答えをした。最後に「マッサージ!」って言ったら、その横にあった3畳くらいの個室に連れて行かれて少し待たされた。しばらくして、さっきの男が入ってきて「45分?1時間??」と何やら料金表のような物を見せられた。短い方と指差したら「OK!OK!!」と言われた。ちなみに、彼は30歳前後で薄っすらと化粧をしていた。

部屋の中には、ベッドが一つぽつんと置かれていた。龍哥は促されるままにベッドに横たわろうとした。すると・・・するとである!その男は服を脱げというではないか。(足裏マッサージやのになんで服?)と一瞬不思議に思ったが、ここは言われるとおりにしようと思って、シャツとズボンを脱いだ。だが・・・その男はさらに「全部!全部!!」と片言の日本語とジェスチャー混じりで言うではないか。(なんか変やなぁ・・・。)とは思いながら、何故か龍哥はすっぽんぽんになり、男の前で横たわった。すると今度は、「うつ伏せ!うつ伏せ!!」と男が言うので、素直にうつ伏せの体勢になったその直後・・・予期せぬその出来事が起こったのだった!!

なんと、彼はいきなり龍哥の股間を触りだすのだ。そして…その場所以外は決して触らない。表を向いても股間しか触らない…。(なんや?このマッサージは?いつ足、マッサージしてくれるねんやろ???)そう心の中では思っていたが、広東語も英語も話せない龍哥には、その意思を伝える術が無かった。

全部裸にされてしまった龍哥は、もしもの事があったらどうして逃げようとか、財布は無事なのかとか、ずっと考えていた。もしかしたら、LOPOから聞いていた『香港マフィア』の巣窟なのか?…なんていう事も想像したのだった。とにかく、一瞬男が部屋を出て行った隙に、急いで目の前に掛けられた自分のズボンのポケットの財布だけは確認した。…無事だった。

(この先、いったい何されるんやろ…。)そうは思ったが、結局そのままマッサージを受けていた。すると、外に2人の女性の声が聞こえてきた。「お客が来た。」と言って部屋を出て行きすぐに戻ってきた男は、「次のお客が来たから、アンタはもう終わりにしていいか?」らしき事を言ってくる。「アンタ、言ってた時間より15分短いので、安くしとくよ。それでいいか?」

勿論、龍哥にすれば、これ以上大事な所だけを触られ続けるのもなんだったので、最初言われた料金より安くなった代金を支払ってそのお店を飛んで出た。店を出たとたん龍哥は言い知れぬ安堵感に包まれた。

いったいあのマッサージは何だったんだろう?最後まで足を触られる事の無かった龍哥の足裏マッサージ初体験は終了した。マッサージの男が、結構紳士的で良心的な印象だった事を最後に付け加えておこう。
***********************************************************************************************

さて…夕方になり、今日これからの予定は私の今回の旅行において最大のイベントでもあるビクトリア・ピークの観光だ。前回香港を訪れた時には、夜という夜は毎晩Leslieのコンサートへ詣でていたために、ピークへ行く事もそこから夜景を観る事も出来なかったのだ。だから、百万ドルとも言われる夜景を、今回一度は観ておきたかったのだ。

ピークへ登る前に、皇后餅店(クィーンズケーキ店)へ行きたいと龍哥に言うと、うろうろ歩き回るのは嫌だと言われた。MTR・バスなどを利用しなるべく費用を抑えようと考えていたけれど、その一言で的士(タクシー)で移動する事になった。

ホテルの前からタクシーに乗り込んで、『我想去皇后餅店and山頂[糸覧]車総站(山麓駅)』と書いたメモを見せた。すると運転手は、「あんたが行きたいのは皇后飯店じゃないんだね、餅店だね?」と言う。私はそうだと言うと、えぇっと…確かあの辺だったよなぁ…とか独り言をブツブツ言う運転手。「コーズウェイ・べイの駅の近くの筈です。」とこちらが言うと、「最近、外国からの人の方が私らより香港の地図に詳しいよ。日本人なんか特にね…ハッハッハー!」と笑う。

そして、たどり着いたのは、海底トンネルを抜けて少し行ったところを左に曲がってすぐの場所。前に一度しか来た事がないのだが、あきらかにその場所ではない事くらいすぐに分かった。「ここが皇后餅店の近く?」と聞くと、「あぁ!そうだよ!!」と自信たっぷりの運転手。ここら辺はパーキングが無いので路上駐車するしかないが、いったい何分くらい待てばいいのかと聞く。

仕方なく10分待っていてくれと行って車を降りたが・・・。降りてビックリ…なんと、ここはあのLeslieが経営していたお店の場所じゃないか!なんてことだ!オーナーは代わったが店名は以前のままだと聞いていたのに…。あの『為您鐘情 うぇいにんちょんちん』のネームが跡形も無く消されており、皇后飯店と皇后餅店にかわっていた。運転手の言った事に間違いはなかったんだけど・・・。

1997年のコンサートの時、チケットの半券を持ってきてくれたら、僕のコーヒーショップでご馳走するよと言っていたLeslie。結局、使う事は無かったけど、ずっと大切に持ち続けていた想い出だった。しかし今…急に色褪せてしまったような気分にさせられた。それと共に、Leslieの存在がより遠くの物になってしまったような気もした。龍哥にすれば、そんな事知った事じゃないよね。でも…私は一人で感傷的になっていたのだった。それでもやっぱりお土産は買わなくちゃと、ヌガーやらクッキーなど合計$176を買って車に戻った。

傷心のまま、今度はピークトラムの駅を目指してもらう。時間にして10分もあれば到着と思っていたが、車はなかなか足を止めようとしない。もうこの辺に駅があってもおかしくない筈…と思った瞬間、タクシーの窓越しやや後ろに「トラム乗り場」の表示を見た(ような気がした)。ちゃんとメモに書いたのを見せたし、運転手のおっちゃんは「これで合ってる、合ってる」と言わんばかりの口調だし、もうすぐ山麓駅に着くものだと信じていた。ところが、車は上へ上へとぐるぐる登っていくではないか。結局タクシーがやっと止まったのは、トラムの山頂駅だった。「トラムの駅だろ?」タクシーの運転手は平然と言った。。。やられたぁ~~~!!料金$145が旅行会計のお財布からヒラヒラと飛んでいった。「おっちゃん、さっきのトコ、山麓駅違うん?!戻ってぇや~!!」って強気で言えていればなぁ。

そんなこんなでやっと憧れのピークへ。とにかく、たばこの吸いたい龍哥のために真っ先にレストランに入る事にした。行き先は勿論、CAFE DECO(カフェ・デコ)、映画『金枝玉葉(君さえいれば)』に出てくるアノお店だ。入り口でまず予約を取っているかと言う事とタバコは吸うかどうかを訊かれた。以前、Rちゃんから「あそこは予約を取っておくと良い席が取れるよ。」って教えてもらっていたのだけれど、なにしろ…いつ気分が変わるか分からない人間が同行するので、ハナからそれは諦めていた。予約も無く、喫煙希望の私達が案内されたのは下の階のホール中央辺り。窓側の良い席はやはり予約席でいっぱいだった。でも、そんな席からでも総ガラス張りの窓から香港のアノ夜景が結構見えたので、龍哥も私も満足だった。

注文したものはベジタブル・インドカレーとピザそれにビールと、夕食にしてはやや軽めのメニューだったがとても美味しかった。お店を出たところに、ピークの夜景の絵葉書が販売されていたので2セット買った。

そして、夜景を観るために外へ出てみた。普段でも百万ドルの夜景とうたわれているピークからのそれは、春節のおめでたいイルミネーションによって一段とグレイドアップされていた。ずっと観ていたいなぁ~っと思ってウットリした瞬間、「寒いなぁ!もう降りよう?!」。。。。。暖かい香港のことを考えて、春用の服を着ていた龍哥がすぐ横で震えていた。いくら香港とはいえ、2月のピークの夜は冷えるのだった。

仕方なく、トラム山頂駅へ向かう。中にあるだろうチケット売り場は影も見えず、乗車待ちの列が延々と続いていた。さっき、タクシーで痛い目に遭っているし、やっぱりトラムにはどうしても乗りたかったので、結局強風の中その最後尾に並んだ。…やっと乗る順番が回ってきた。

ここで、山側の席に座ってしまっては今まで並んだかいが無いと、係員の支持が出るとすばやく海側の席をゲットした。元とはいえ、『大阪のおばちゃんパワー』が自分にもある事を確信した。そうして、後ろ向きではあるが夜景を観ながら何分かの遊覧を楽しむ事ができた。山頂でもう少しいたかったけれど、満足度は90%、今度行くときは、寒くない時に行こう。

山麓駅からは、タクシーに乗って宿まで帰った。来るときだって、本当はココまでで良かったのになぁ。料金はもちろん随分安くて済んだ。

ベッドに入る前に、さっきピークで買った絵葉書に友達へのメッセージを書き、一日を終えた。