IINAZUKE!2
「周助、おはよう。今日は少し早いわね。」
食卓で朝食の用意を整える母の姿。昨日のことがまるで夢の出来事だったように極日常的な朝だ。ひょっとして本当に夢だったのかもしれない。いや、きっとそうだ。そうに違いない。いつもと何も変わらない朝の様子に安堵の笑みを浮かべながら
「うん。ちょっと夢見が悪くて・・・・」と言いかけて次の瞬間一気に現実に引き戻される。
「あら、昨日のそこ、随分腫上がってるわね。」
「えっ、そこって?」
母の目線の先に手を当ててみる。
「っ!!なんだこれ?」
「やだ、覚えてないの?」
念入りに化粧をし、化け終えた姉がダイニングに入ってきた。
「急に顔面から倒れていくんだもの。びっくりしたのよ。でもその後自分で起き上がって部屋まで行ったじゃない?大丈夫。僕は大丈夫・・・って呪文みたいに繰り返してたけど・・」
「・・・・・・・・・」
不、不覚だ。覚えてない・・・。い、いや、それよりこの展開は・・やはり夢ではないということか。昨日のことを夢にするには少々都合がいいような気がしてきた。だが、万に一つであっても可能性がある限り夢に賭けたい!いや賭けてみせる!!よし!!ここはやはり確かめてみるしかないだろう。
「あ、あのさ!!昨日のことだけど・・・」一大決心して発した言葉を母がやんわり遮った。
「今日はオレンジペコにしたのよ。どう?」
「へっ?」
「あなたアールグレーはちょっと癖があるって言ってたでしょ。フルーツ系が好みだって。だから今日は変えてみたのよ。」
「周助はまだまだ子供ね。あのツンと鼻を突く香りがいいんじゃない。」
「はあ・・」
今、不二は紅茶の香りなどどうでもよかった。それよりも聞かねばならない事がある。
「でさ、昨日のことなんだけど・・」
「あ、お母さん。今日少し遅くなるから・・」またしても今度は姉によって遮られた。
「あら、デート?」
「まあね。父さんには内緒よ。言うと門限がどうのって煩いんだから・・・学生でもあるまいし、いくつだと思ってるのかしら・・・」
「ふふ・・普段離れてるんだから仕方ないわよ。それにどんな父親にとっても娘なんてずーっと幼いままなのよ。」
「ふ〜ん、そんなもんなの?あ、もう行かなくちゃ・・、じゃあお母さんよろしくね。」
「あ、ちょっと姉さん!!待っ・・・・・・行っちゃった。」
(はぁ〜、なんかタイミングが合わないなあ・・それより何が男に頼るのはごめんだよ。しっかり彼氏いるんじゃない。父さんも父さんだ。姉さんが怖いなんてよく言う・・。単に嫁にやりたくないだけじゃないか・・・。)
「父さんは?」
「まだ、お休みよ。時差ぼけがなおってないのよ。ゆっくり寝かしてあげなくちゃ。」
昨日のことを聞くタイミングを失ってしまった不二は、あれが父の時差ぼけが成したうわ言である事を心より願い学校へ行く事にした。
「あら、もう行くの?」
このまま何も聞かずに行くほうがいいかもしれない。この後の学校生活に支障が出ないとも限らない。
「うん、勉強も部活も集中したいしね・・・」
「気を付けて行くのよ。ああそうそう。予定聞いといて頂戴。お父さんがこっちにいる間に一度ご招待しなくちゃって話してたのよ。母さんも是非お会いしたいしね。」
「・・・・・・・誰に?」
「や〜ね。手塚くんに決まってるでしょう?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ごんっ!!
そのままドアを開けずに突進したのは言うまでもない。
××××××××××
「わぁ〜どしたの?不二ぃ?」
昨晩と今朝打ち付けたところにどうしても目が行くらしい・・・菊丸が猫のような大きな目を尚見開いてマジマジ見入っている。
「ちょっと・・転んだだけだよ。」
「ちょっとじゃないっしょ?どんな転び方したんだよぉ〜。2箇所もこんな風になるなんて!!」
「ほ、ほんとに大丈夫だから・・ね、エージ」
まさか手塚の妻になれと言われ気を失った拍子に打ったなんて口が避けても言える分けない。いや待てよ、誰かに相談できれば何か解決の糸口が見つかるかもしれない・・・・けど、英二にそんな事実が漏れたらきっと青学創設以来の大スクープって学園中が大騒ぎするに違いない。
(それは困る・・なるべく穏便に済まさなくちゃ。)
乾は?い、いやこれまたおもしろがってデータを取り出すに決まってる。
(結婚する確立●%とか言っちゃって。)
そ、そうだ大石!彼なら真剣に考えてくれるかも・・
(だめだ、考えすぎて今度こそ胃に穴を開けてしまう。)
タカさんは平和主義だしなあ〜
(この際一緒になるのが一番の解決策じゃないのかなあ。とか言いそうだ。)
海堂は・・・
(部長が望むなら・・って手塚に協力し兼ねないよ・・それだけはだめだ!)
越前は興味なさげに一言。
(俺、関係ないっす・・・・だろうしなぁ。)
・・・・・・はっ!!なんてことだっ!!・・手塚との結婚披露宴で大喰らいしてる桃を想像してしまった。
(あり得ねーなー、あり得ねーよ。って、こっちがあり得ないんだよ。)
だめだ相談しようなんて僕が甘かった。
「どうしてこう揃いも揃って・・・」
こうなったら頼れるのは自分しかいない。そうだ人間結局最後は自分なんだ!よし、手塚に直談判!これしかない!!
机を両手でドンと叩きながら何かを決意したかのように勢いよく立ち上がる。
「どったの?不二」菊丸が驚いて眼をぱちくりさせている。
「行って来るよ。英二。宣戦布告だ!」
「・・・???・・・」
意を決した不二がしっかり目を見据えて向かう先は手塚国光のいる3年1組だった。
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み、短かった・・・すみません。