LAST DAYS 5
ギシッとベッドのスプリングが揺れた。
手塚の腕から離れた周は、上から注がれる優しい視線を感じながらそっと瞼を閉じる。
トクン、トクンと心臓が上下する音が聞こえるが、それ以外は何もない。
周囲は至極静かだ。
手塚の指先が周の髪を一房救って落とす。
頬を掠めたそれはほんの少しくすぐったい。
ギシリ・・
手塚の体重が加わって、周の身体がより一層深く沈んだ。
顔に掛かる小さな吐息を感じた瞬間、再び髪に手塚の指先が触れて、生暖かくて柔らかい感触が唇に当たった。
堅くなった身体をゆっくり解かしていくように、何度も触れるだけの口付けが繰り返される。
こんなキスを受けたのは初めてだった。
自分を見失って行くのか、これが本来の自分なのか。
相変わらず心臓は騒がしいが、今まで感じていた気恥ずかしさは薄れていった。
これは極自然な行為なのだと、
妹としてではなく、女として手塚を見つめることに罪はないのだと、不思議と納得させられた。
「・・ん・・・」
息が抜けるように周から小さく漏れる声。
どことなく甘い香りが手塚の鼻腔を擽る。
優しい口付けに陶酔していく周に、少しずつ手塚の中から理性の枷が壊れていった。
「・・・・っ!」
肌に冷たい空気が触れたと思った瞬間、周の鼓動が一際跳ね上がった。
いつの間にか、肩が剥き出しになるほど、纏っていたバスローブの胸元が大きく広げられている。
唇にあった温もりが少しずつ首筋を辿って鎖骨へと下りてきた。
手塚の手が、ぎりぎり胸の上で留まっていた布地に差し込まれる。
「あ!待って・・・」
咄嗟に周は胸元を隠すように両手で押さえた。
周の戸惑う顔つきが手塚の目に飛び込んでくる。
やはり周にはまだ早かったか。
無理強いするつもりはない。周が少しでも恐怖を感じるようなら―――
手塚は潔く手を引き、周から身体を外した。
そんな手塚に周もゆっくり身体を起こす。
「ごめん・・・怒った?」
「いや。無理をする必要はない。今日はやはり―――」
「ちっ、違うよ!その・・そういうことじゃなくて・・何ていうか・・えっと・・」
胸元を押さえながら、もじもじと言葉を詰まらせる周。
「・・・は、恥ずかしいんだもん」
顔を両手で覆って下を向いて首を振る。
手塚に身体を見られるなど、今までは正直何とも思わなかった。
事実、手塚の目の前で平気で着替える周に、手塚は真っ赤になりながら、何度説教をしたことか。
当の周は「別に減るものでもなし・・」とものぐさな態度で聞いていたが、今になって何となく手塚の気持ちが分かったような・・・。
これまでに感じた事がない羞恥心が周を襲った。
二十歳にもなれば周でも、これから手塚に何をされるのかくらい想像がつく。
そう思ったら、熱がどかんと放出して、つい拒絶するような行動をとってしまった。
要は初々しい乙女の心理というもの。
「だから・・その・・嫌とかじゃなくて・・・あの・・」
周は下を向いたまま、手塚のシャツをキュッと掴む。
恥ずかしがりながらも、その仕草は何とも強請っているようで。
手塚の胸が一気に高鳴った。
照れるその姿に、尚本能が煽られてしまう。
一度は離した身体、だが、こんな周を目にしてどうして引き下がれようか。
湧き上がる熱に任せて、手塚は周を押し倒した。
「あっ・・・」
ドサッと身体が跳ね上がる。
声を出す間もなく、再び手塚の唇が降りてきた。
だが、先ほどのような優しいものではなく、息を吸い込むのが困難なほどの激しいキス。
周が酸素を求めるように、口を開いた隙を手塚は逃さない。
すかさず舌を差し込んで、歯列をなぞりながら、ゆっくりそれをこじ開ける。
更に奥へ侵入すれば、周の湿った舌に到達した。
絡めとればぺちゃりと湿った音がする。
それがまた手塚の脳を刺激して、更に周の口腔内を蹂躙していく。
すっかり抵抗を忘れた周の胸元へするりと手を差し込めば、柔らかい膨らみが手塚の指先に触れた。
「・・ん・・」
掌で覆うように優しく包み込めば、周から抜けるような甘い吐息が漏れはじめた。
ここまでくれば、自制心など存在していたことを忘れてしまう。理性の欠片すらすでに失っていた。
手塚の中の男が増長して、これまで大切に護ってきた周の背中にある羽を、この手でもぎ取ってやりたいとまで思ってしまう。
手塚は深い口付けをしながら、ふくらみを揉み解し、反対側の手でバスローブの腰紐をするりと外した。
「やっ!!」
急に心もとなくなった腰元と全身に当たった空気で、周は自分が手塚によって露にされたことに気づく。
先ほどと同じ。妹の時とは違う、女としての身体を手塚に求められていることに、酷く羞恥心が襲ってくるのだ。
けれども手塚ももう理解した。
決して拒んでいるのではなく、自分の前で女になってしまうが故の恥じらい。
そう思えば愛おしさもまた一層深くなり、周を欲する気持ちがより大きくなる。
既に剥ぎ取られたバスローブ、自分を覆うものは自分しかなく、周は両腕を交差させて身体を隠した。
「俺が・・・好きなんだろう?」
手塚は周の両手首を掴んで言う。
真剣なその瞳に、周も吊られるようにコクリと頷いた。
「それならお前の全てを見せてくれ」
あの奥手だった手塚とは思えない台詞に、周の全身がブルッと震えた。
そんな手塚に欲情している自分がいる。
低くて甘いその声にまるで全てを支配されたように身体の力が抜けて行く。
掴んだ手首を両側に開くと、周の肌が再び露になった。
透ける様な白。窓から差し込む月明かりがその美しさを尚際立たせる。
初めて見るわけではないのに、手塚はその肢体に目を奪われた。
「そんなに見ちゃやだ・・恥ずかしいって・・・言ってるのに・・」
自分の身体を凝視する手塚に、周は泣きそうな声で訴えるが、両手首をしっかりシーツに止められていては、もう隠す事もできない。
細身の身体、女の子独特の丸みや柔らかさに欠けると日頃からずっとコンプレックスだった。
そんなことは手塚も知っているだろうが、今改めてどう思っただろうか。
少年とも言えるような体型に、もしかして幻滅しているかもしれない。
やはり女には見がたいと思ってしまったかも―――
「綺麗だ」
「・・・え?」
周の不安を他所に、手塚は周の美しさに魅せられていた。
いや、すっかり捕らわれの身とでも言うべきか。
「お兄ちゃ・・?」
周の手首を解放し、額にかかる髪を払ってやる。
そして自らのシャツを脱ぎ捨てた。
「愛している」
「・・・んっ・・」
再び塞がれた唇、手塚の重みを全身で受け止める。
自分の肌で手塚の肌を直接感じている。
その重みが、温もりが、こんなに嬉しい事なんて。
力なく投げ出していた両腕を周はゆっくりと持ち上げて、手塚の広い背中へ回した。
掌に手塚を感じた瞬間、手塚への恋しい想いが一気に流れ出た。
「僕も・・・愛してる。誰よりもあなたが好、あっ・・・」
続く言葉は手塚の愛撫に掻き消された。
「・・・ん・・・・・はぁ・・」
手塚の動きに左右される声。
淫らな姿を堂々と曝してしまう自分が恥ずかしくて、周は唇を噛んで漏れる声を耐えた。
「やめろ・・」
力を入れる唇にそっと宛がわれた指先。
何度もなぞられては、堅く結んだものも解けてしまう。
再び手塚の唇が触れた後、歯型が付いてしまったそれを舌先でぺろりと舐められた。
瞬間、身体の奥底から脳天まで電流が駆け巡る。
「や・・だ・・・」
ふるふると首を振る周の瞳は今にも涙が零れそうに潤んでいて。
「自分が・・コントロールできない・・。僕が僕でなくなっていくよ・・」
このままどうなってしまうのか分からない。
滅多に感情を捕らわれる事などないのに。
溺れてしまう。手塚の黒い眼差しに吸い込まれてしまいそうだ。
「・・・じだ」
かすかに震えた声。
凡そ手塚のものとは思えないその声に、周は手塚を見つめた。
そこにはあるのは至極余裕のない顔。
「俺も、同じだ。お前を壊しそうで怖い」
お兄ちゃん・・・。
汗ばんだ手塚の手も震えている。
いつも雄雄しくて威厳があって、何事にも限界には程遠いと思わせる手塚が、自分を前に怖いと言った。
何を恐れていたのだろう。
側にいなくても、前を進んでも、手塚はずっと手塚だった。
自分を見失うほど、愛してもらっていたのに―――。
周は身体を起こして手塚を抱きしめる。
怖くないといえば嘘だ。
けれど不安はない。迷いも・・・ない。
だから―――、
「―――大丈夫。壊れたりなんかしない。手塚と一緒だから大丈夫―――」
まるで聖母マリアのように、手塚を包む周は大きくて優しい。
「周・・・」
「うん?」
「何で『手塚』なんだ?」
ぺロッと舌を出して、周は無邪気に笑う。
「だって『お兄ちゃん』じゃ燃えないでしょ」
「馬鹿・・・」
くすくすと笑う声が少しずつ小さくなっていく。
再び周は手塚の腕の中に、深く深く沈んでいった。
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萌えると燃えるちょっと迷った(笑)。萌え〜♪とはやっぱ違う・・・よね。でも燃える方が恥ずかしいんですけど(笑)。
えっと・・・・なんかいろんな意味ですみません(><)。1ページ使って前置きだけで終わりました(惨敗)。
やっぱayaseさんにはハードルが少々高すぎ・・・未熟者(><)。