(ミニ法話)  こころの泉

   108.誠の道

 人間の本性とは何かを論じた儒書に『中庸』があります。人間の本性は天与のものであるとして、それを誠という語で表しています。同書に、「誠とは天の道なり、これを誠にするは人の道なり」との言葉があります。
 二宮尊徳は、この教えを尊重したそうです。そして、水車を例に引いて、「水車は回転しているとき半輪は水から出ており、半輪は水の中に入っている。そのことで水車は回転する。もし、全部が水から出ていれば水車は回転しないし、全部が水に入っていても回転しない」と述べ、さらに「水車が水の中に入っているときは天の道がはたらいていること、水車が水から出ているときは人の道を行じていることである」と説いています。半輪が出て水車がまわることは、天の道と人の道とが互いに関わりあうことでこの世の中が成り立っているというわけです。
 誠とは、うそのない心、ごまかしのない行為を言います。誠は天の道ですが、これを生かすのは人の道です。そのため人の道は天の道に反していくことでまとまる場合があります。
 天の道は平等にすべてのものを生かすが、誰かを何かをというように特定のものだけを生かそうということではありません。たとえば、雨の降ることが人のためになることもあるし、人のためにならないこともあります。雨が降ることにより田や畑に雑草が自然に生えてきます。これは天の道です。しかし、人間にとって必要な米や野菜を育てようとすると、雑草を抜かなければなりません。これは人の道です。
 天の道は、平等にすべてのものに及んでいます。だが、これを誠にするのは人の道です。また、人間を誠にしていく正しい生き方があります。天の道の誠に従って分別を離れ、人の道をよく守っていけば、心が清らかになっていきます。これは仏教の教えと同じ内容だといえます。

        (平成26年9月)



 ミニ法話は、今月で108回となります、一応所期の目的に達したので一つのくぎりにしたいと思います。9年間の長きにわたって未熟な内容をお読みいただき感謝いたしております。

    合掌