(ミニ法話) こころの泉
19.嫉妬の心
昔、中国は漢の時代に一人の役人がいました。彼は、若くて美しい女性を妾にして、殊の外深く寵愛しておりました。
ある日、彼女は、父から手紙を受け取りました。その手紙には、生活が苦しいので主人にそのことを伝えてもらいたいとの内容が書かれていました。役人が外出から帰ってきたとき、こっそりと手紙を読んでいる彼女の様子に疑いをもちました。
彼女は、自分は妾になったばかりだから、父の生活苦のことを主人にたのむことなどできないと考えて、手紙を口に入れて呑み込んでしまいました。役人はそれを見て、きっと恋人から来た手紙に違いないと邪推して、彼女の腹を割いてその手紙を読もうとしました。腹の中から手紙を取り出して読み終わって、なんと馬鹿なことをしてしまったのかと嘆き、悔んだのでした。
また、次のような話が経典にあります。雪山(せっせん)に共命鳥(ぐみょうちょう)という鳥がいました。一つの身体に、頭が二つあるという珍しい鳥です。一つの頭は、常においしい実を食べておりました。もう一つの頭は、おいしい実を食べたことがないので、是非一度食べたいものだと思い、誤まって毒の実を食べてしまったのです。そのため、その鳥は死んでしまいました。
役人は、嫉妬の心を起こしたために、妾を殺すという罪をつくりました。共命鳥のもう一つの頭が嫉妬心を起こして毒の実を食べたために、共命鳥そのものが死んでしまいました。
嫉妬の心は、誰にでも起こってくるものです。むさぼりや怒り、無明などの根本煩悩にしたがって生じる煩悩なのです。嫉妬は、怒りを伴いますので、冷静な心がはたらかなくなり、相手を傷つけてしまい、結果として自分を駄目にしてしまいます。
(平成19年3月)
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