(ミニ法話)  こころの泉

   20.柔軟な心

 Aさんは、頭の切れる弁の達者な人でした。人が何か一口言うと、何口も言い返すというような性格の人でした。また、ものを言い出すと、立て板に水を流すように、相手に有無を言わせず意見を述べるという状態でした。Bさんは、Aさんはたいそう頭のいい人だなと感心していました。
 ある日、Aさんが元気なくBさんのところにやって来ました。「私はいつでも正しいことを主張しているのに、どうも人がついてこない。皆私を煙たがって避けようとしている。なぜなんだろう」と悩んでいる様子でした。
 そこで、Bさんは、次のように伝えました。「君の性格は、どうもトタン屋根のようだね。もっとわら屋根になるように努力したらどうですか」
 すると、Aさんはいぶかって、どういう意味なのかとBさんに尋ねました。
 「トタン屋根は、雨が降ると音をたててはじき返すからにぎやかだが、少しも雨水を吸収しない。それと反対に、わら屋根は、雨水を吸い込んで、音をたてるようなことをしない。君もわら屋根になったつもりで、人の意見を受け入れるようにしてはどうか」と忠告しました。
 頭の回転が速くて、弁舌の巧みなAさんのような人はいます。自分の意見ばかりを主張して、相手の考えを聞かないため嫌われるのは当然のことです。我(が)を押し付けているだけです。相手の意見や考えを受け入れることは、相手の心をいただくことです。それにはまず、こちらの心がやわらかでなければなりません。冷たくて固い心は、トタン屋根のようなもので、相手の心を初めから拒絶していることになります。
 わら屋根のような柔軟な心になりたいものです。
        (平成19年4月)