(ミニ法話)  こころの泉

   22.心の余裕

 現在の日本は、一種の競争社会といえます。受験という個人間の競争から職場での出世競争、企業と企業との激しい競争もあります。また、国と国の競争もあります。様々な競争があったからこそわが国の経済が発展してきたことは否定できません。そのため競争が必ずしも悪いとは言えないわけですが、過度になりますと、個人や企業のレベルでも、国のレベルでも実に多くの弊害が出てきます。
 企業や国家間の競争はともかくとして、個人間の競争に勝っても有頂天にならずに、相手に譲るという心をもたないと、苦悩になっていくのではないかと思われます。といっても競争が悪いというわけではありません。急いでいる人がいれば、順番を譲ってあげるような心が大切ではないかということです。
 狭い道で車同士出くわしたとき、どちらかが譲らないと通れません。中には我の強い人がいて、絶対譲らないという人もいます。譲ってあげることのできる人は、相手より心に余裕がある人といえます。譲ってもらって腹の立てる人はいません。
 譲ってあげれる心の持ち主は、豊かな気持で過ごすことのできる人といえます。『論語』に、
   己れ立たんと欲して人を立て、
   己れ達せんと欲して人を達す
 という教えがあります。自分がある地位に就きたいと思ったら、まず人を立ててあげるように心がけることが大切であるという意味です。人を立てて自分が脇役にまわる。そうすることがかえって自分が主役になるとの教えです。
 人に譲ることは損だと考えるかもしれませんが、そうではありません。目先のことを考えるとそうかもしれませんが、人から信頼と信用を得て、求めなくてもそれは自分に善果として還ってくるものといえます。
        (平成19年6月)