(ミニ法話) こころの泉
76.春風秋霜
人に会う約束をして、その人が遅れてくると不快に思う人がいます。このような人は、約束をきっちり守る人といえます。約束を守る人は、約束を守らない人に不信感を抱きます。約束の時間を気にしない人は、相手が時間に遅れてきてもあまりとらわれません。約束の時間をきっちり守る人は、性格がきっちりしている人ですから、万事しっかりと取り組みます。時間をあまり気にしない人は、一見おおらかそうですが、いい加減なところがあります。人はどちらかでしょうが、本当は自分はきっちりとしておいて、人のミスは許すという態度が必要だと思います。
江戸時代に佐藤一斉という儒者がいました。彼に次のような言葉があります。
春風以て人に接し、秋霜以て自らつつしむ
人に接するときには、春風がそよそよと吹くようにゆったりとした温かい心で向かい、自分に対するときには、晩秋の冷たい霜のように厳しい心で自分を戒めていくとの意になります。本来、人はこうあるべきでしょう。ところが、れわれはその逆で、自分に対するときには甘い心で接し、人に接するときには、厳しい心で相手を責めるということをしています。
自分はいい加減にしておいて、人のことばかり厳しく責めています。たとえば、タバコを吸っているのに、人にはタバコは体に悪いから止めたほうがいい、酒をたくさん飲んでいるのに、あまり飲まない方がいい、などと自分に甘く、人に厳しい態度をとりがちです。
佐藤一斉が説くように、人には春風のように温和に接し、自分には晩秋の冷たい霜のように凛として向かうということが求められます。なかなか容易ではありませんが、目標とすべき価値があるものと思います。
(平成24年1月)
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