(ミニ法話)  こころの泉

       85.貪りを捨てる

 ブッダの十大弟子の中に、マハーカッサパという修行僧がいました。漢訳では摩訶迦葉(まかかしょう)と表わされています。カッサパという名の人は大勢いたのですが、その中で一番勝れているとの意マハーをつけて、マハーカッサパと呼ばれていました。彼は、十大弟子の中で頭陀(ずだ)第一とされていました。頭陀の本来の意味は、ふるい落とすです。何をふるい落とすのかといえば、煩悩の垢を落とすということです。
 ブッダの教団では、頭陀の実践が重んじられました。この頭陀の実践を頭陀行といいます。頭陀行とは、衣食住に関する貪りを払い除き、ひたすら仏道を行ずることです。つまり世間的な欲望から離れて、悟りに向かって邁進することです。マカーカッサパはこの頭陀行に最も勝れていたので、修行僧たちから慕われ、尊敬されていたようです。ブッダ入滅後、教団を継いだのはマハーカッサパでした。
 明治の初期、伊藤博文や井上馨、山県有朋などの英傑がいましたが、その中で伊藤博文が一番勢力があって、思いきったこと、思いどおりのことができたといわれております。なぜそんなことができたのかと言えば、金を貯めることをしなかったからだとされています。他の人は、地位を利用して金を貯めていた。その中で伊藤博文は金を貯めなかったし、自分の家を大きくしようとはしなかった。自分の地位を利用して私利私欲に走ることはなかったので、人々は一目置くようになり、発言力が強くなったということです。
 これは非常に意味のある話です。自分の利益を捨てるという決心があれば、強い気持ちになれるのではないでしょうか。国や地方の上に立つ人が私的な貪りの欲心を捨てることができれば、世の中はもっと前に進んでいくものと思われます。

        (平成24年10月)